V字谷に咲いていた梅花黄蓮・バイカオウレン


ヒダナ沢遡行
 奥秩父入川
2011年5月14〜15日
西嶋さん、高貫さん、moguさん、
Mさん、Sさん(ゲスト)、高橋

遡行図  

コースタイム
5月14日
入川夕暮キャンプ場9:28−赤岩沢出合10:43〜55−中小屋沢出合13:05〜30−ヒダナ沢出合14:12−五段の滝20m14:42〜16:20−1210m付近テン場17:28(泊)
5月15日
テン場7:35−1430m二俣8:51−1630m二俣10:09−1820m支尾根11:08−登山道11:55〜12:30−国道14:57−入川林道入口15:15

プロローグ
 奥秩父、入川の支流に中小屋沢がある。その支流のヒダナ沢の遡行をした。この水系では、金山沢〜大荒川谷の遡行がよく知られているが、このヒダナ沢の情報は少ない。ヒダナ沢はごく少数の者しか遡行していないようだ。情報としては、ひろたさんの単独行の遡行記録が最も詳しい。他には、ネットを調べる限りにおいては、まともな資料は残されていない。今回さわねの山行で、この「未開の沢」を登ってみようということにした。できれば、詳細な遡行図を作成したい、とも考えた。帰路は、東隣の中小屋沢を下降するつもりだったが、力量的に難しく断念した。この山行には、ゲストSさんも参加してくれ、賑やかな遡行になった。
 ヒダナ沢は下流域のナメ滝群と上流域のV字谷に展開される小滝群に特徴がある。中流域には、礫岩の長いゴーロがある。下流域のナメ滝群は、出合いから、テン場にした標高1230m付近まで続く。これらのナメ滝は、見ていても美しいが、その滝登りが楽しい。滑りやすいので小滝といえども油断できない。滝の弱点を見つけ、細かいホールドを自分のものにして越えていく爽快感がある。まさに沢登りの楽しさがそこにある。
 中流域の長いゴーロが終わる1450m付近から、ふたたび滝が連続するようになる。この辺りには、まだ雪渓が残っていた。1530m付近からは絵に書いたようなV字谷が始まり、1630mの二俣まで30分ほど続く。このV字谷は、なかなか見ることのできない景観である。思わず歓声を上げてしまうナメが開けたり、微妙な難しさのナメ滝があったり、難しいトイ状滝が現れたり、この上流域の小滝を越えるのは実に楽しい。入川の重い水の渡渉をクリアし、下流域の五段20mを越えた者だけに与えられる喜びと言って良いだろう。


5月14日
入川遡行
 ヒダナ沢へは入川本流を遡行してから入渓することになる。赤沢谷出合で水量の多い入川に入り、左岸の古道を歩く。行き詰まったところで入川に降りた。古道を歩いたのは20分ぐらいだ。入川の水は重い。水量が多い沢を歩き慣れていないためだろう。膝上になると、怖い。一昨日50mmの雨が降ったので多少水が増えていたのかも知れない。何度も、油断できない渡渉を繰り返した。特に体重の軽い女性は、怖い思いをしただろう。この入川の遡行が核心ではないかと思っていたが、まさにそのような感があった。入川は大きな滝がないので、渡渉以外は難しくない。だが、水の勢いが絞られた低い滝で、越えられない場所があった。水の勢いと釜の深さが半端じゃない。ここは、左のバンドを登り、4mほど懸垂して越えた。降りた先も水流が強く、気の弱い自分にとっては、嫌な渡渉であった。この入川は、前日に雨が降ったら遡行が難しいだろう。苦戦して、やっとのことで中小屋沢の出合いに着いた。予想時間の2倍、2時間もかかってしまった。ヒダナ沢は、この中小屋沢の支流である。

入川赤谷川出合い 水が多いように見える 重い水を慎重に渡渉する 見た目よりはずっと怖い


入川の重い流れ


大岩を乗り越えて 急流を避けて岩を上がる


中小屋沢の出合 立派な滝だ この右手から高捲きする


出合いゴルジュの高巻
 中小屋沢の出合いには、魚止ノ滝と言えるような立派な滝が懸かっている。この先は、ひろたさんの資料によれば、ゴルジュの中に難しいナメ滝が続いているようだ。だが、とても我々の実力では登れそうにないので、このゴルジュは左岸から巻いた。出合いからすぐ、左岸の弱点を急登するとかすかな踏み跡を見る。傾斜が緩くなると、左に沢音を聞きながらのトラバースになる。一箇所滝が見えるところがあった。踏み跡を追い、地形図上で二俣の右俣、ヒダナ沢へ降りる。ここは、垂壁の切れる僅かな弱点を降りることになる。私は、補助ロープを出しゴボウで降りたが、ロープなしで降りた者もある。降りたところが、ちょうど二俣だ。ここは、二俣の手前では壁が高く降りられない。高巻きを始め、二俣に着いたのは40分後だった。

ヒダナ沢の出合 正面は中小屋沢 右手がヒダナ沢


核心とテン場
 この日の核心は、入渓してほどなくして現れる五段20m滝だろう。五段20滝は、傾斜が強い多段のナメ滝で、まともに登ることはできない。最下段の釜には、大きな倒木が横たわっている。ここは、思案した末に左岸を巻くことにし、実力派のMさんにリードをお願いした。右の急な泥壁をまっすぐ上がり、岩壁の下を落ち口へ向けてトラバースした。30mいっぱいで一度ピッチを切り、その上も15m程ロープを伸ばした。この五段20m滝を登ればもう怖いもの無しと考えたが、すぐ難しいミニ五段滝10mが現れた。ここは、最上段の2mほどの滝が難しい。ここは、クライマー高貫さんが左岸をトラバース気味に先行、最後に登った高橋は、スタンスが甘くて足が出ず、ゴボウで登った。テン場は、1250mの上に開けるはずの「広河原」を目指したが、時間が足りず手前の1210m付近の右岸に決めた。4〜5人用テントを無理して張ったが、2〜3人用であれば三張りはOKだ。

二段6mナメ滝 滑らないように慎重に 3mナメ滝 前方にナメが見える


五段20m 下三段が見える 下から4、3、4m 水流沿いは登れそうにない 左岸を
トラバース気味に登った Mさんリード


3m、3mナメ滝 上部は倒木の左を上がる ミニ五段滝10mの最上部2m これが難しい 巻けない
4mナメ滝 ホールドを拾いながら テン場 次の日の朝



5月15日
 テン場の上ですぐゴルジュになる。ここは、右岸から出合う枝沢が落ちるところである。ゴルジュ内には、3、4、3mの滝が続く。滑りやすいので油断できない。下流域の滝群はここまでだ。この先で沢が大きく左を曲がる地点から中流域の礫岩の河原が広がる。砂地や草地が見つけられないので泊場を探すのは結構難しいだろう。昨日のテン場の決断は、正解であったことが分かる。この河原は、ときどき倒木に行く手を遮られる。だが、煩わしいほどでもない。礫岩の河原は、左から顕著な二本の支沢が入った先、1450m付近でようやく終わる。ヒダナ沢の上流域の美しさについてはすでに述べた。

テン場の朝 ここはゴルジュ手前だ

テン場前の小滝 心が洗われるような テン場上のゴルジュ出口 トイ状3m滝 滑りやすい


沢が左へ曲がると河原が開ける 倒木があった



広い河原が続く 前方に5mほどの滝が見える 4mトイ状滝 V字谷のはじまり
前方に4mトイ状滝が見える V字谷もこの辺りで終わり 1630m二俣で休憩 辛い詰め いつもそう思う


詰め
 上流域のV字谷を過ぎると標高1630m付近で二俣(2:1)になる。ここは、右が本流と思われるが、左俣へ入った。労力最小で、登山道へ出ようという算段だ。詰めは短いほうが良い。そうでなくても、60歳を越えた老齢組は、ギブアップしたい辛さをこらえての急登だ。1680m付近で水が涸れ、沢形も曖昧になった。コンパスと地形図で行方を定め、左手の支尾根の1820m付近の平坦地に着いた。後はこの支尾根を左手の中小屋沢の源頭に沿って上がり、1900m付近をトラバースして、登山道へ出ようと考えた。尾根を登り始めると、幸いにも、全く予期していなかった薄い踏み跡が現れた。沢には全く踏み跡を認めなかったのだから、藪山をやる人達のものだろうか。踏み跡は、まさに自分たちの考えた、「登山道への最短距離」に続いていた。ひょっこりと1900mの尾根に出て、そのすぐ下には登山道があった。バンザーイ



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