アセビのつぼみが膨らんでいた




猫越岳 天城山脈
2011.03.06 晴れ 風強い
単独




コースタイム

仁科峠9:33−展望台10:15−猫越火山湖10:26−猫越岳10:35−猫越峠10:55−林道11:22−三階滝沢11:32−滝見橋(中ノ沢)12:00〜12:11−中ノ沢橋(板ヶ沢右俣)12:22−板ヶ沢左俣12:36〜12:59−仁科峠13:30

プロローグ
 伊豆半島で沢登りができるところを探したが、なかなか検索に掛かってこない。おそらく、伊豆ではあまり遡行がされていないのだと思われる。山が険しくなく穏やかな丘陵が多いこともその理由だと思われる。そんな中で、ひとつの資料を見つけた。それは、沢登りの記録ではなく、滝巡りの資料だった。ウェブを検索していて気づいたのは、全国には滝マニアが意外と多いということである。彼氏たちは、滝に出会いその写真を撮ることが目的なので、滝に関わる写真はしっかりと見せてくれる。一方、滝マニアに比較して、釣り人の
HPは役に立たないことが多い。渓谷の名前を伏せることが多く、釣果の魚の写真を見せるばかりで渓谷の景観を見せることはまれである。

 滝マニアの資料によると、西伊豆の仁科川(にしながわ)の支流に滝の多い沢が幾つかあるようだ。仁科川は西伊豆最大の河川だ。写真を見るかぎりでは、その支流は、なかなかきれいな渓谷のようである。この資料を参考に、新しい渓の調査に出掛けた。天城峠から西へ伸びる稜線にある猫越岳(ねっこだけ)を歩き、その帰りにでも、仁科川の支流を探索しようという算段である。

猫越岳
 車で伊豆中央道を走り、修善寺の先で土肥(とい)へ向かい、途中船原峠から稜線を走るスカイラインへ入って南下する。この道路は、ほとんど車が走っていない。
 仁科峠に車を置き、そこから東へ、猫越岳(ねっこだけ)へ向かう登山道に入る。しばらくは、広い笹原のなだらかな山道を歩く。10分もしないうちに大岩の並ぶの見晴台(940m)になる。振り返ると、西から北に宇久須港、駿河湾、南アルプスの白い山稜、富士山が見える。素晴らしい景観だ。遮るものが何もない。だが、風が強い。海からの風が立っていられないほどに吹いてくる。早々に見晴台を下がり風の遮られる山道を歩く。しばらくは、右手に牧草地を見ながらの歩行だ。登りにさしかかり994mの後藤山を歩く辺りからアセビ(馬酔木)の林になり、それが下山するまで続く。
 天城にアセビは多い。毒があるためだと思うが、シカなどに食べられないので冬も旺盛である。落葉しないためにこの時期でも緑の葉が美しい。これから暖かくなると、赤みを帯びた白い小さな花を咲かせる。今はどの樹にもつぼみが膨らんでいる。アセビは伸びると折れ曲がった枝を横に広げるので、登山道はアセビのトンネルを歩くようになる。後藤山を下ると明るい鞍部に出るが、後藤峠はまだこの先だ。峠には標識があり、南に下る山道が伸びていた。


見晴台からの宇久須港と駿河湾
登ってきた方角を振り返る


 後藤峠を過ぎると上りになり、ひと登りすると展望台があった。風がない日には暖かな休憩スポットなのだと思うが、今日は強風で長居は無用だった。倒れないように足元を踏ん張って、北面に伸びる伊豆の山々の写真を撮った。展望台を下がると小さな火口湖が静かにたたずんでいる。冬枯れの景色で寒々しい。ここは、猫越岳の噴火の時にできたという。ここから猫越岳はすぐだ。明るい日差しのアセビの林を歩くと時折ヒメシャラやブナに出会う。猫越岳の手前で、登山道の左手にブナの群落を見つけ写真を撮った。猫越岳は、樹々に囲まれ展望はない。

後藤峠付近 アセビのトンネルを歩く
火口湖手前 陽が射す明るい登山道


 猫越岳には伊豆の山には珍しい「岳」の名前が付けられている。猫越岳は標高1034mに過ぎないので不思議に思っていた。猫越岳頂上のプレートを見て少々合点した。どうやらこの猫越岳は、太古の昔に太平洋の海底が隆起して火山が噴火してできたらしい。それが、伊豆半島形成の端緒のようだ。プレートには、噴火が250万年前とある。想像できない時間だ。人間の物差しでは測れない時間の長さだと思う。250万年前というと、猿人が石器を使って生活していた頃のようである。調べてみると、丹沢山塊も同じ頃に火山による造山活動が起きていたようだ。
 猫越岳からは、南向きにルートが変わる。アセビのトンネルを下がると左手にブナの大きな原生林が現れる。なかなかみごとな林で美しい。右手には相変わらずアセビの林が続く。すぐ猫越峠だ。ここには立派な標識がある。平らな丘陵地に樹木がまばらに生える、のどかな場所である。ひと休みしたくなるところだが、一人で歩くと、ついつい休まずに歩いてしまう。そういえば、少しも休まずにここまで来てしまった。稜線伝いにまだ登山道が伸びているはずだが、今日はここから幹線道路を目指して下山する。

猫越岳の先に広いブナの原生林
猫越峠からの下山路


 稜線に近い下山路は水の侵食によってかなり荒れている。最近手を入れたのだろう。枝葉が刈られ、新しい赤ペンキが登山者をガイドしてくれる。だが、人の歩いた形跡はほとんど無い。やがて登山道は、沢を右に見ながら下る。針葉樹林に変わると登山道は広く歩きやすくなる。峠から
30分もすると立派な林道へ出た。あとは、車の少ない道路を歩いて仁科峠まで戻るだけだ。


下山路が荒れている 赤ペンキに従って降りた
植林地になると登山道もしっかり




仁科川支流の調査
 帰路、仁科峠へ続く道路を横切っている沢が、今日の調査の対象になっている沢だ。仁科峠に至るまでに道路を横切る仁科川の支流は四つある。下山してすぐ横切るのは三階滝沢で12mの大きな滝が道路から見える。水量も多い立派な滝だ(写真)。この滝の上流にも同様な滝があることを思わせるので、滝を巻いて上流を観察した。だが、沢の傾斜が緩やかになり滝などは無かった。おそらくさらに上流に入っても同じではないかとおもう。地形図を見ると傾斜が緩くなっていることが分かるからである。
 次に横切るのは中ノ沢である。この橋は滝見橋となっていた。橋の下に大きな滝、その上流には小さな滝が連続していることが分かる。水量も結構ある。三番目に横切るのは板ヶ沢だ。この沢に掛かる橋は何故か中ノ沢橋となっている。先の資料や地形図から判断すると、この沢は板ヶ沢右俣と考えられるが、なぜ橋の名前が中ノ沢橋となってしまったのだろう。調べてみる必要があるだろう。この沢も結構水量は多い。橋の上下に滝が見える。四番目に道を横切る沢は、板ヶ沢左俣ともいえる沢である。ここはには新しい大きな堰堤が並び沢の景観が壊されている。遡行の価値はなさそうであった。

 三階滝沢、中ノ沢、板ヶ沢右俣、この三つの沢を遡行する場合、どこから入渓するかが大きな問題となる。車以外の交通機関がないため現地での入渓点と帰路は、良く考えなければならない。幸い三階本谷橋の下1kmのところに、沢へ降りると思われる「大滝歩道」なるものを発見した。場合によっては、滝見橋と中ノ沢橋の間から板ヶ沢沿いに下がる林道を三つの沢の分岐へ下がるという方法も考えられる。



中ノ沢 滝見橋下の滝、落ち口から滝壺を覗く
    三階滝沢 林道そばの12m滝
渓が刻まれた山並みを見る 仁科峠近く 遠くに牧場の家が見える






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