次の日、まだ暗いうちから起きて

           とんのむねやま
西棚ノ沢〜鳥ノ胸山 道志
2010年12月1819日 晴れ
西嶋さん、下野さん、クマチさん、高貫さん
moguさん、高橋



遡行図  なし


コースタイム
12月18日
西棚ノ沢出合5m滝14:25−760m二俣手前テン場14:50
12月19日
テン場発8:26−4m滝8:37−二俣(1:1)790m8:47−林道9:00−鳥ノ胸山10:45−秋葉山11:40〜12:15−道志の湯13:18


1218 西棚ノ沢遡行
 お昼過ぎに山梨県道志村の「道志の湯」に集合した。その先300m、加入道山への登山口駐車場に車を置いて、出発。室久保川の左岸の道路を300m歩くと橋がある。ここは渡らずに左岸を真直ぐ歩く。この先は「道志森のコテージ」のようだ。踏み跡の無い左岸をそのまま歩くと左岸から西棚ノ沢が出合う。
 出合いは、なんと5mの滝だ。滝の無い地味な沢だと思っていたので、一同バンザーイ。写真を撮ったりしながら、高貫さんを先頭に滑りそうな花崗岩の滝をヒョイヒョイと登る。滝って良いなーと思う。ましてやこんな季節はずれに、こんな綺麗な沢に巡り会えるなんて。その上も小さな滝とナメが続く。沢床は花崗岩の一種だと思うが、白っぽい花崗岩とは少し違う。雲母が多い、やや黒い御影石だ。砂は白い。みんなヤッターと思っている。広いナメが現われるとほどなく、右岸に絶好のテン場が現われた。世話人の西嶋さんは、この辺りが泊り場だと判断したようだが、ルートの全容がつかめていない我々は、先を歩くことを主張した。歩き始めてまだ、30分しか経っていないのだ。だが、そのすぐ先の、くの字に沢が曲る所の二俣(標高760m)で引き返して、先のテン場へ戻ったのだった。冬の日暮れは早い。午後3時前に設営を始めた。

出合いにドカンと5m滝が



小さな3m滝 沢床は黒っぽい花崗岩

冬枯れの中を歩く



ナメを歩く この先右岸に絶好のテン場が


 テントを張って、薪を集める。何を言われるわけでもなく、いつもの通りに沢の営みが始まる。今日は、世話人西嶋さん、調子の戻りつつある下野さん、久々、6ヶ月ぶりの高貫さん、調整著しいクマチさん、そして新人moguさんを含めた総勢6名である。あっという間に、テント張りも薪集めも終わり、焚き火を開始。折るとパキパキ音を立てる枯れ木のお陰で、すぐに炎が立った。今年最後の焚き火が、我々の気持ちを高揚させる。里は風の強い日だったが、沢の中は風の無い穏やかな気候だった。水も思いのほか温かい。ただ、漂う空気は、ピリッとした12月の冷たい輝きを見せていた。
 例によって、まだ明るいうちに酒盛りが始まった。クマチさんが用意してくれたワインというよりは葡萄酒という名が良く似合う温かい食前酒で「カンパーイ」。はてさて、この三時半ごろから始まった宴会は、延々と途切れなく続くのだった。2時間近く呑んだ午後5時半ごろの「今日は11時まで呑むぞ」という高橋の予言を誰も信用しようとはしなかった。だが、結局全員が寝るのは11時半となり、予言のとおりに宴会は繰り広げられたのだった。南会津の男女沢(オナガワorナメガワ)でもそうだったが、東の尾根から満月足らずの明るい月が上がり、中天に懸かり、そして西の尾根に没するまで延々と呑んだ。焚き火の炎の力は大きい。おそらくは、零度を切っている寒空の中で、8時間も座って楽しむ気力を与えてくれるのだ。
 クマチさんや高貫さんの美しい喉も聞かせてもらった。山の歌だったが、知らない歌だった。山の歌は大概聞いたと思ったのだが、奥が深いものかも知れない。何を聞いたか何を話したか大方は忘れてしまった。私は多くは聞き役に回った。その方が性に合うからだ。だが、夜がふけるに従い、「沢を歩くことや山を歩く」ことについて、互いの思いを語り、そして互いの思いを受け取った。深い理解の会話が続いたと思う。互いに性格や境遇が違うもの同士が、目的を同じくして集う意味を、語り合った。来年も「この仲間で、渓谷を歩くんだ」という思いがみなぎって来るようだった。寒空に集う我々の周りだけがボーッと明るかったのは、焚き火のせいばかりではなかったのである。脱いだ沢靴が凍って固くなった夜半、やっと我々はテントに入ったのだった。


1219 西棚ノ沢遡行〜鳥ノ胸山〜秋葉山〜道志の湯

にぎやかな宴から覚めると朝が寂しい

 翌朝は、暗いうちから年寄り連中は起きてしまった。歳をとると眠る力が弱くなるのだろう。まだ十分に暗い四時ごろから起きはじめ、夜明け前には大概起きた。世話人西嶋さんの、沢でゆっくりした朝を楽しむという思いは簡単に蹴散らされ、八時過ぎに早々の出発だ。凍った沢靴を沢の水で溶かし、足を入れるのがつらい。心のどこかに、「物好きも大概にしなきゃ」と言う自分がいた。テン場のすぐ上の二俣を過ぎ10分ほど歩くと、ちょっと難しそうな4mの滝だった。温かい時期だったら水を浴びるのも良いだろうが、この時期のルートは限られる。ちょっと難しそうな登攀をする者、右岸を簡単に巻く者、様々だった。じきに標高800m付近の二俣になる。水量は1:1だ。ここは、右へ入る。この先は、まだまだ沢を歩くものと思っていたが、西嶋さんは、標高810mの先で左岸の林道へ上がり、908mピークから鳥ノ胸山(とんのむねやま)のすぐ南のピークへ伸びる尾根を上がると言う。まだ沢を歩き足りない高貫さんと高橋は、泣く泣く西嶋さんの指示に従ったのだった。

冷たい靴を履いて歩く 思いのほか水は温かい



4m滝 この滝の手前、左岸から支流が入る

4m滝  右のクラックから登ったが、クラックに靴が挟まって抜けない高橋は冷や汗

790mの二俣手前 この先10分で左岸の林道へ


 林道を北に上がる。まぶしいオレンジのチョッキを着た軽トラックの人々と何度もすれ違った。イノシシ狩りのようだった。林道が峠を越える手前から支尾根に入り806mピークを目指し急登する。そこから予定の尾根へ上がる。長い苦しい登りだった。最後は険しいトラバースを経て鞍部へ上がった。そこから鳥ノ胸山はわずかだ。快晴の頂上からは、西正面に御正体山が、南西には大きな白い富士山が見えた。
 鳥ノ胸山から北に山道を歩き、すぐの分岐を右の山道へ入る。左は、「道の駅どうし」へ下る登山道である。かなり急な斜面も交えた尾根を、地形図に従って秋葉山880mを目指した。幾つか尾根の分岐が有る。風の無い暖かな秋葉山で昼食を採った。山頂は、それまでの大気の冷たさとうって変わった暖かさだった。この上ない幸せを感じた。山頂の北、少し下がった所に祠があった。枯れた松のせいだろうか、山頂は伐採されて西面の展望がきいた。そこからは、北東に伸びる長い尾根を、道志川を渡る橋を目指して下った。道は無い。最後までヤブは無かった。橋を渡って国道を歩き、終着点の「道志の湯」を目指した。
 「道志の湯」でジョーさんに会った。前日の都合の付かなかったジョーさんは、個人遡行で大室山から加入道山を歩いてこの温泉に下山したらしい。


806mピークを目指す 日が差してくる



苦しい急登が続く 山は美しい

鳥ノ胸山(とんのむねやま)の頂上から、御正体山を見る



 御正体山の先に富士山が 山間に道志みちが伸びる

秋葉山の頂上 伐採され見通しが良い


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