10.09.1 高度計の謎

 ウェルネス・クライマーズの山崎さんが、自分の高度計について疑いを持っていたので、高度計について少し。
 高度計は便利なものだ。使い方が上手であれば、±10mで標高が特定できる。沢を遡行しているときには地形図があれば、谷筋が分かるので現在地を正確に特定できる。だが、高度計は正確に標高を示すとは限らない。だから、高度計の目盛りだけを当てにして測定すると、とんでもない失敗をすることになる。
 誰でも経験していることだと思うが、高度計と地形図の標高が異なるのは日常茶飯事である。もともと高度計は、気圧計に過ぎないので、天候による気圧の変化によっても高度計の読みは変化する。しかし、日常的に高度計を使用していて気が付くのは、とても気候の変化によっては説明できない高度計の振れである。例えば、下山しているときに、当然高度は下がっていくはずであるが、下っているにもかかわらず、突然標高が高く示されるときがある。この現象を私は、「高度計が踊る」と勝手に言っているが、その正確な理由は分からない。高度計が気圧計であることから考えれば、下山中に空気の薄いスポットに入り込み、気圧が下がった結果、標高が高く表示されたと考えることもできる。だが、気象学上そんな現象が起こるのだろうか。これは、原理的な理由を知っている人がいたらぜひ教えてほしいものだと思う。しかし、「高度計が踊る」現象はいつまでも続くわけではなく、時間がある程度経つと正確と思われる標高を表示することが多い。これを、「高度計が座る」と表現している。
 こんな奇怪な現象ではなくても、高度計の表示が、地形図の標高と徐々にズレを拡大するするのはしょつちゅうである。例えば中央アルプスの細尾沢(標高差1550m)を遡行したときには、このズレが遡行につれて拡大して、稜線へ出たときには80mにもなっていた。これは、標高差が大きい場合の例であるが、高度計のズレは、5%ぐらい現れても不思議ではない。もうひとつ、これは多分初歩的なことであると思うが、高度計は即時測定をしているのではなく、例えば20秒や、30秒の定まった間隔ごとに測定しているらしい。取扱説明書を見ると、測定間隔は変更設定できるようだ。したがって、正確な高度計の表示は少なくても測定間隔以上の時間を待ってから読み取るべきである。
 重要なのは、地形図と高度計で読み取る測定値のズレである。このズレをどういう風に扱うのかが、高度計を使いこなせるかどうかのポイントになる。例えば、要所で高度計を合わせ直すような指導をするガイドを見ることがあるが、これは良い方法だとは思えない。なぜなら、高度計を修正する操作をすると、「高度計が踊る」ケースがあり、修正値とは異なった値を示すことがあるからだ。だから、高度計を合わせ直した場合には、合わせ直した数値を示しているかどうかを、数分後に確認する必要がある。そうしないと、かなり大きく異なった標高を表示しているケースがある。これは、私自身の狭い経験によるものなので、高度計のメーカによっては異なるのかもしれない。今自分の持っているのはBARIGOのNo.49である、この高度計は、登るときは正確な標高よりも低く、下山のときは正確な標高よりも高く表示されるのが特徴である。
 今自分の高度計の使い方は、遡行の始点で高度計を合わせる。その後、上記の理由により遡行中は高度計を修正しない。そのかわり、要所要所で高度計と地形図との標高差をチェックしてその差を常に記憶して、頭の中で高度を修正していく方法である。こうしていくと、高度計の表示に根本から疑いを持つ事態にはならず、かなり正確に現在地の標高を推定できる。つまり、現在地の確認を怠らずにつねに「高度計の誤差を理解して高度計を使う」ということである。これは、現在地を確認できなければ、高度計を正確に使いこなせないということでもある。以上は、高度計の表示に様々な疑問を持った上で、自分が考えた末の高度計の使い方である。もし、もう少しシンプルに高度計を使う上手な方法があったら、ぜひ教えを請いたいものだと思う。

1)高度計の表示は、測定時間間隔を待って読み取る。
2)一度高度計をセットした後は高度計を修正しない。
3)高度計は踊ることがあるが、放置すれば元へ戻ることが多い。
4)登山中、地形図の標高とのズレは徐々に大きくなる。標高差の5%ぐらいのズレは出る。
5)登山中は、現在地を確認し高度計のズレを要所で確認する。
6)正確な標高は、このズレを頭の中で修正することによって得られる。


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