笹穴沢 谷川連峰赤谷川
2010年9月4、5日
沢登り同好会 さわね
西嶋さん、Kさん、ガクさん、園田さん、高橋
遡行図

沢泊での焚き火 乾燥した流木はあっという間に炎を

コースタイム
9月4日
川古温泉14:20-金山沢入渓15:39-テン場(870m)16:25
9月5日
テン場7:30-小野俣沢出合7:57-金山沢出合8:50-三段24m滝10:45-25m滝13:05~14:10-30m滝14:23~13:01-40mナメ滝15:25ー15m滝16:01~16:31-10mハング滝16:58-二俣(1660m)17:55ートラバースの踏み跡19:24(1860m)-登山道(1820m)19:48

プロローグ

 「笹穴沢は優しい美しさを秘め、平標山へつめあげている。つめの草原の美しさ、大ナメ滝の素晴らしさと、語りつくせぬものがあり・・・」 笹穴沢を紹介した吉川栄一氏の文章である。だいぶ前に氏の編集になる『沢登り入門とガイド』の記事を見て、一度は笹穴沢へ行ってみたいものだと思っていた。他のメンバーにも笹穴沢のファンがいて、今回は5人のにぎやかな遡行となった。
 ネットの情報を調べてみると、笹穴沢は両岸に樹木の被らない、開放的な明るさと長大なナメ滝が特徴のようだ。これは、私の好きな沢のタイプであった。だが、結構高い滝が多く、それなりの登攀技術も要求される沢のようである。


前衛金山沢の清流










初日テン場前の淵で泳ぐ二人 水は冷たくない

二日目には、笹穴沢の核心までにはこんな所もあった


 8m滝 こんな美しい滝もあって この上で左俣を分ける

時間との戦い

 笹穴沢は
40m大ナメ滝に象徴されるように、ダイナミックな滝を随所に懸けるなかなか手強い沢だと聞いていた。そのために、ネットの情報も良く分析して出かけたつもりだったが、いかんせん相手が強すぎた。前日に前衛の沢へ入り、次の日の本番の活動時間に余裕を持たせたはずだった。だが、遡行時間が12時間、行動時間16時間という、自分としては、最も「過酷」な長時間の山行になった。過酷な山行は、先週の報告にも「暑さとの戦い」や「アスナロの密ヤブとの戦い」を紹介したが、今回は「時間との戦い」であった。
 笹穴沢遡行の朝、7時半にテン場・標高860m付近を出発して延々夜7時半まで遡行を続け、やっとのことで稜線の登山道へ達したのであった。午後3時ごろには登山道へ出るだろうとの目論見がお昼過ぎから徐々に狂い始め、ヘッデンを点灯しながら登山道に達したのは、午後7時半になっていた。日は完全に暮れていた。まだ、下山時間が2時間近くあったので、静岡県に住む高橋は、その時点で当日の帰宅を断念した。

 遅れが出れば益々疲労が蓄積され、さらにペースがダウンするという悪循環に陥るものだが、今回はまるで絵に描いたようにそのパターンに苦しめられた。この理由は、メンバーの故障もあったが、パーティーの体力、技術力が遡行の沢に追い付いていなかったということだろう。
 登山道に上がり、下山を始めた夜8時頃から徐々に厭戦気分が支配しはじめ、9時頃には「時間との戦い」よりも、下界に降りた後は何処で寝て何を腹いっぱい食べるだの、生理的欲求の世界に入り込んでしまい、我々は終に完全敗北した。誰ひとり、最終電車に間に合わず、越後湯沢の駅前で一日の路上生活を強いられたのであった。
 こう書くと、ずいぶん過酷でつまらない遡行だったように見える。だが、1)ヘッデンを点けながら滝を登る難しさ、2)夜間のヤブの踏み跡の追跡の難しさ、3)夕刻のブヨの来襲と戦う方法、4)あきらめること、負けることの清々しさ、4)林道の蛍との思いがけない遭遇、などなど、「成功した沢登りでは得られない」予期していなかった体験を得ることができたのである。沢登りを始めてから、初めての貴重な体験であり、記念すべき遡行であった。

越後湯沢駅の路上生活 夜中でも路面が暖かく寒さを感じない

難しい滝
 どれが難しい滝かといえば、左俣を分けた先の核心部に現われる10m以上の滝全部だったが、特に記憶に残った滝について記す。(遡行図参照)
 左俣の出合から5分ほどで三段の大きな滝24mにぶつかる。変化のあるダイナミックな滝だ。下段から4m、8m、12mである。いずれも滝右を登った。下段は一歩がややスタンスが細かいが何とかなる。難しく感じるのは、8m滝の中盤でぬめりがあるところだ。残置ハーケンに少し長めのスリングを掛けA0で登るところが少し緊張する。ロープがあったほうが安心だろう。上段の12m滝は右の細流を登れば難しくない。
 三段滝の次に出てくる12mを高橋は、右の窪から巻き上がって笹を掴んでのトラバースで落ち口に出た。ここは、窪をあがる中盤の土を上がる所がやや難しいが、右の岩へ上がるスタンスを見つけられればクリアできる。高橋以外の四人はKさんリードで水流左を登ったが、中盤にホールドの細かいところがある。ロープを出した。この上すぐの15mは流れが二手に分かれている。ここは、滝左隅を簡単に登ったが、水流が多いときには難しくなるのかも知れない。西嶋さん、Kさんの二人は、滝右を登った。
 この15m滝から30分ぐらいのところの25mの標高は1300m付近だ。この滝は巻きが難しく、登るしかない。ここは、滝左の乾いた段状の岩をガクさんがリード、難しいところを苦労しながらも上手にクリアした。二箇所で残置支点にビレイを取った。傾斜のゆるくなったところでブッシュに支点を取り、セカンド以下を確保する。二番手は高橋だったが、中盤の外傾スタンスはヌンチャクを掴みA0 になってしまった。リードだったら転落。この滝で全員が登るのに1時間かかった。
 この滝から20分の30m滝は、この沢で最も難しいと思われる。さっきの25mでもその高さに圧倒されてしまった高橋は、この滝前では登攀ルートを追う前に戦意喪失。巻きのルートを考えた。幸い30m滝の手前左から入る支沢に登るルートがありそうだ。支沢を落ち口高さ上まで登り、支沢右のブッシュを30m滝の落ち口方面にトラバースする。ブッシュの切れた後は、点在するブッシュにロープを掛けて下り気味に草付きをトラバースする作戦を練り上げた。支沢を右から巻いて登り始めたとき、30m滝左端の小さな窪に濃い踏み跡を見つけたので、作戦を変更しここを登ることにした。ここの方が小さく巻けるはずだ。ここは、落ち口高さまで草つきだがスタンスがある。ただ、窪を登った後の落ち口までの長いトラバース気味の下降が要注意だ。ここは、踏み跡にしたがってトラバースしたが、途中二箇所のブッシュに捨て縄でロープをかけて順番に降りた。30m滝の上に続く微妙な角度の10mナメ滝を全員が登りきったのは、30m滝下から一時間半かかっていた。ここの標高は1380mであった。
 1390mの40mナメ滝は、やや傾斜の緩いナメ滝である。ここからこの沢の核心である200mナメが始まる。ここは各人思い思いのルートを取り登っていった。40mナメ滝は、左のほうが簡単というようなウェブ情報があったので、滝右を上がってから左に移り水流左を上がった。だが、上部で難しくなったので傾斜のゆるい箇所で左岸に渡り、水流右を上がった。この滝は難しくないがスリップのないように注意が必要である。この滝の落ち口を右へ曲ると傾斜がゆるいナメになった。一息ついて写真を撮ったりした。ここのナメがこの沢のハイライトらしい。だが、今日は日照り続きのため水が少なく、少々迫力に欠けた。この上は傾斜がきつくなってくるので、右の乾いた岩を登った。この上も、さらにナメが続くが難しくはない。
 200mナメが続いた上は、直角に右に流れの方角が変わる所に15m滝がある。かなり急な傾斜の見事な滝である。ここは、滝左を簡単に巻けるような情報があったので、高橋がリードしたが落ち口下3mで行き詰まった。ここでもガクさんが難しい草付きの登攀をクリアしてくれた。高橋とKさんはロープを下ろしてもらいゴボウで突破、園田さんと西嶋さんは行き詰まった左手にルートを開拓して支尾根に上がり、その支尾根沿いに落ち口まで降りてきた。
 最後の大きな滝、鉢底に落ちる10mハング滝は、滝のかなり前の左手緩やかな傾斜をゆっくり登り右へ旋回すると、笹原に巻きの踏み跡が見つかる。最後は笹を掴んでの下降となるが難しくない。なお、滝の左手に続く岩場とヤブの境界に左へ廻る踏み跡が付いているが、この巻き道は体力を消耗するので、前記のルートのほうが賢いだろう。
 1660m二俣を左に入ってからも、4~5mの滝は出てくる。時にはきついボサを搔き分けながら小さな支沢が入るたびに、左へルートを取ると標高1860m付近で突然沢形が消失する。ここの左手を上がると、すぐ上に薄い踏み跡があった。すでに暗くなり、踏み跡が見つかるかどうか不安だったので、うれしかった。ここを南に下がりぎみにトラバーすると20分ほどで平標山から下ってくる立派な登山道へ出た。途中、踏み跡の乱れた箇所が有ったが、日中なら問題なくルート探索できるだろう。


三段24m滝(4、8、12m) 右を登る。8m滝の中盤がぬめる


15m滝 左の水流左の乾いた岩を上がりテラスに出る

8m滝 ここは左から簡単に登れる


25m滝 水量がやや少ない。左の段状の乾いた岩を登る。中盤の外傾したスタンスは左へ逃げて交わす。残置ハーケンがある。

25m滝  楢原さんが後続を確保する


30m滝 ここは滝左に続く草付きの窪(写真では見えない)を上がり、そこから落ち口へトラバースした。窪の登りは難しくない。トラバースの途中、ブッシュに捨て縄でロープを掛けた。

40mナメ滝 本日のハイライト。このナメ滝に出会うためにやって来た。水流の左右どちらも登れるが、後半はより簡単そうな水流右を登った。滝下に左から支流が落ちている。

40mナメ滝を登る

滑る訳にはいかないので慎重に

40mナメ滝の落ち口 やっと傾斜が緩くなりひと安心

40mナメ滝落ち口上 広いナメになっている。上部は傾斜があるので右の乾いた岩を歩く

乾いた岩を歩けば安心








ナメ滝を楽しみながら上がっていける





40mナメ滝落ち口を上から見る。傾斜がきつく見えるが


ナメはまだ続く この上は15m滝になる

思い思いに釜を越えて 前方に15m滝が見える


15m滝  結構難しそうだ。滝左の草付を小さく巻いたが落ち口下3mが難しかった

二段8m滝 左を上がれる


10mハング滝 左の緩斜面を上がり笹薮を巻く。 踏み跡がある



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