奥秩父入川 股ノ沢

2010年6月5日、6日
くもり、晴れ
沢登り同好会 さわね
西嶋さん、ジョーさん、高橋

遡行図

柳小屋のつり橋の下で入渓の準備

 沢を歩く喜びの、その源はどこにあるのだろうか。険しい高巻きをして、再び沢へ降り立ち休憩した。熱くなった身体を吹き過ぎてゆく谷風が心地良い。仲間とも語らず、岩々を縫う清流を見つめていると、なぜ谷に惹かれるのだろうかという、原理的な問いを反芻してしまう。なぜ渓谷に惹かれるのだろうか。この問いに対しては、いつか言葉で語り尽くしたいと思うが、問いが深すぎて躊躇してしまう。
 西嶋さんの世話人になる股ノ沢の遡行へ参加した。奥秩父、入川の支流だ。参加者は、ジョーさんと高橋を加えた三人。二人は40代、高橋は60代である。二人は、昨年来険谷を歩き続けてきた俊英、高橋はゆるい渓ばかりを歩いてきた万年初心者だ。二人とは、二週間前に泙川の支流を別行動で遡行し、ス沢で集中するはずであったが、それが果たせずに終わった。そんなことだろうか、二人とも昨年、12月以来の再会だとは思えない。

 股ノ沢遡行の第一の特徴は、そのアプローチが長いことだろう。赤沢吊橋から柳小屋までのトラバース道は、アップダウンが多く結構体力を使う。 地形図には入川沿いに登山道の表示があるが、現在は廃道なのだろう。ここは赤沢谷橋を渡ってから支尾根を上がり、標高1200m前後の高所をトラバースして、柳小屋へ向う。小屋は無人だが、なかなかきれいに保たれている。釣り人が多く利用しているようだ。
 柳小屋前の吊橋下から股ノ沢へ入渓し遡行を始めると、右岸に真ノ沢を分ける。その出合には立派な釣り橋が架かっている。水量は2:1で真ノ沢が多い。ここからが股ノ沢の遡行になる。股ノ沢は、小さな滝であっても直登できないケースが多い。どの滝にも立派な釜があり滝が水に磨かれて滑りやすいこと、たびたび峡谷が現われることが理由である。ゴルジュが多いので巻きのルートもさぞかし際どいだろうと思わせるが、谷を見る眼があれば多くは苦労せずに巻くことができる。巻きのルートが取れなければ、股ノ沢は歩かれないだろう。股ノ沢の美しさは、随所に現われる深い釜を従えた小さな滝の連瀑帯と、時折現われる10m前後の豪快な瀑布にあるのだろう。どの滝も大高巻きせずに越えることができる。これも股ノ沢の特徴であると思う。また、両岸から時折現われる小さな支沢が、黒い岩を白糸のように滑り落ちる様は、なかなか見事である。とりわけ股ノ沢で美しいのは、上流部の滝である。青々とした苔を付けたナメ滝は他には見られない景観を造り出している。日本庭園の原型とも言うべき美しさがそこにある。

 股ノ沢の遡行で気が付いた特筆すべきことを記しておく(遡行図を参照のこと)。股ノ沢の遡行を始めて、ゴルジュ内に初めて現われる1m、3m滝は、深い釜があるので直登できない。ここは、滝を10mほど戻った左岸の残置ロープを上がって巻いた。落ち口上の肩に絶妙な巻き道がある。さらに歩いた先のV字谷を落ちる大釜を持つ3m滝は、右岸を巻いた。左の窪を上り、さらにその先を踏み跡に従って支尾根を大きく巻いて上流の大きな窪へ出る。途中小さな窪をまたぐ踏み跡には、スリングが残されていた。この先で踏み跡が消える。ここから窪を下がる。最初からロープを出して、ゴボウで降りたほうが早いだろう。2〜3ピッチで沢へ降り立つ。ここは、小さく巻いて落ち口上の岩壁から懸垂するルートもあるようだが、ここに記したルートのほうが安全である。
 右から支流を迎えた先に現われる初めての大滝10mは、比較的簡単に左を巻くことができる。その先の6m滝はこの沢唯一まともに水流沿いを登ることができる。右から落ち口へ上がったが、落ち口は磨かれているので足元に注意だ。ハンドホールドはある。テン場は1280m付近の左岸と1320m付近で左から支沢を落とす右岸にある。我々は、標高1320m付近にタープを広げた。
 左岸から入
る袖小屋窪を過ぎた先、ゴルジュに現われる6m斜瀑は左から巻いた。滝手前右岸の窪を上がり踏み跡に従ってトラバースするが、落ち口の上を過ぎた先で5mの懸垂下降になる。このすぐ先に見える3mCSは、直登も巻きも難しそうに見えたが、滝右の岩を比較的簡単に巻くことができた。続くゴルジュの出口の10m滝は、右を巻ける。危険な箇所はないが慎重さが必要である。そのすぐ先で右から支沢が入る(標高1420m)。この先の本流は左岸が大崩壊している。傾斜のゆるい滝が瓦礫の中に埋まっているのが見えた。このナメ滝は消失するのだろう。
 標高1520mの二俣は、左俣に入った。多くのガイドブックには、右俣の様子が詳しく書かれ、左俣はゴーロと記されているものが多い。だが、左俣はなかなか美しい渓相を見せてくれる。青々とした苔の付いた日本庭園風の小滝が次々に現われる。10m滝を右から巻いた先には、手強い数mの滝やゴルジュのトイ状3m滝も現われる。トイ状滝の出口は2mCSとなり、足掛かりが無いため、我々はショルダーで上がった。この上を5分ほど歩くと、十文字峠から下がってくる股ノ沢林道(登山道)と交差した。。ここの右岸には、「秩父渓酔会」の赤札が付けられている。ここから、柳小屋までの踏み跡は、2.5万図とはやや異なるようだが、しっかりとした踏み跡があるので迷うことはない。


6月5日
夕暮キャンプ場8:00−赤沢谷橋9:22−柳小屋12:08〜45−右から沢(1210m)−10m滝14:35−左から沢(1260m)15:03−テン場(1320m)15:41
6月6日
テン場7:33−袖小屋窪8:15−右から沢(1420m)−二俣(左俣へ)10:12−10m滝10:20−登山道10:41〜53−柳小屋12:24〜49−赤沢谷橋15:23−夕暮キャンプ場16:45



6月5日 くもり

ゴルジュ1m、3m滝  右上の絶妙な踏み跡を巻いた


1m、大釜の3m滝 左を高巻いた 

10m滝 左を上がり落ち口上をトラバースすると比較的容易に巻ける













10m滝の右岸を巻く

6m滝 水流沿い右を登った(標高1250m付近)

6m滝を登るジョーさん


1260m付近の支沢の出合 本流は2m滝



6月6日 晴れ

幕場の朝 結構風が冷たく焚き火を燃やす

大釜を持つ4m滝 良い雰囲気だ

苔の生えた小滝が続く


右岸から入る袖小屋沢 下から5m、15m滝

ゴルジュ6m斜瀑 左を高巻いた落ち口の先で5mの懸垂下降

ゴルジュ3mCS 右の張り出した岩を小さく巻いた

ゴルジュ出口10m滝  右を巻くことができる。この上で右から支沢














左岸が大崩壊した先にある日本的情緒のある滝 二段5m

小滝を登ろうとするジョーさん  なかなかきれいな小滝が続く

左俣(以下同)の4m滝


左俣の難しい小滝を登る

ゴルジュトイ状3m滝の先には2mCSが







登山道に出ると石楠花が盛りだった



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