片品川 泙川ス沢

2010年5月22〜23日
沢登り同好会さわね
園田さん、クマチさん、高橋

遡行図

ス沢出合に咲いていた石楠花

5月22日 晴れ 泙川(三俣沢)の遡行
 新緑に包まれた泙川(ひらかわ)
1)の流域を歩いた。遡行対象は、ス沢だ。泙川は、群馬県北東部を流れる片品川の支流で、栃木県境の宿堂坊山(1968m)の西域を流れる。この流域には遡行対象になる沢が沢山あるらしい。同日の小松さん、西嶋さんの大岩沢遡行〜ス沢下降(Aコース)に便乗させてもらい、ス沢を遡行下降する体力温存型のBコースを設定した。同行者は、園田さん、クマチさんだ。国道120号線を利根町平川の集落へ入り狭い林道をひたすら東へ入ると途中ゲートがある。その林道をさらに奥に入る。林道終点、ニグラ沢出合手前にある緩斜面を狙って泙川へ50mほど降下する。ここは、林道下の斜面に排水溝が設置されてある場所だ。この付近の泙川右岸は岩壁が多いので下降できる箇所は限られている。
 泙川は大きな川である。だが、両岸が切り立っているので川幅は限られている。泙川は容易に遡行できる。ただ随所で渡渉するので、ひとたび増水すれば遡下降は困難だろう。幸い当日は、晴天が続いていたので川の流れは穏やかだった。ただ、翌日の天気予報が雨だったので、その点だけは気がかりだったが。ス沢の出合までは、この泙川を3時間以上歩かなければならないのである。泙川の歩行は長いが、退屈しない。多くは河原歩きだが、いたるところで渡渉とへつりが要求され、折々には、岩床のナメが現れ、時には小さなゴルジュが現れる。切り立った両岸には緑浅い新緑の木々が谷を被い、我々の眼を楽しませてくれる。私は、元来急峻な狭い谷を歩くよりも、幅広の豪快な谷をゆったり歩くのが好きだ。谷の陰鬱さが無く、明るいせいだと思う。谷への思いはそれぞれに違う。園田さんやクマチさんはどうなのだろう。
 泙川も突然その豪放さを見せる時がある。湯之沢出合の手前にある6m滝から始まる難所である。6m滝は、左が緩やかなナメ滝、右には直瀑の滝が並列しためずらしい滝だ。ここは、左岸にしっかりした踏み跡がある。踏み跡はその先の左岸から入る湯之沢の出合までつながっている。湯之沢の出合には石積みの堰堤があり勢い良く水を落としている。その出合の雰囲気からして、この流れには魅力的な遡行が待ち受けているように見えた。一度ここを歩いてみるのも良いのではないか。 
 泙川は、湯之沢出合の先を三俣沢と名前を変える。三俣沢には、途中花崗岩スラブ滝の右岸岩壁を2.5mほど固定ロープで登る所がある。そしてその先には、小さなゴルジュもある。ゴルジュには左岸にしっかりした踏み跡があった。三俣沢には、いたるところにかつて人が住んでいた痕跡がある。石積みで丸く囲われた炭焼き跡、石垣で造成された住居跡など、山の幸だけを自らの糧として生きてきた人々の痕跡である。日々をこの辺境の地で生きた人々の生活は、どうだったのだろうか。この険しい土地で、老人はどのように生きたのか。私にはほとんど想像できない世界である。歩くのにも疲れた頃、沢の河原が開けてくればス沢の出合う広河原は近い。ス沢には、巨大な旧い堰堤が見える。老朽化が激しく、いまにも崩れそうな雰囲気がある。
 ス沢出合の対岸の段地に格好のテン場がある。今日はそこで泊り、明日は軽荷でス沢を往復しようという算段だ。テン場は、平地が幾つも重なっている。かつての住居跡だろう。楓(かえで)の新緑が天を被い、折りしも斜面には薄桃色の石楠花が可憐に花開いていた。穏やかに火を燃やし、せせらぎの音を聞きながら山の空気を満喫した。だが、このひと気の絶えた辺境に霜降り肉を焼く煙が立ち上るとは、誰が想像しただろう。園田さんの差し入れである。粒塩と胡椒だけで味付けされた大きなステーキは、日常では食せない絶品だった。単純に焼いただけの肉が、こんなに旨いとは。薪はこのところの晴天続きで、放り込んだだけで炎をあげ、静かに燃えた。中天には半月が懸かっている。もしかしたら、明日も良い天気かもしれない。

5月23日 雨 ス沢の遡行下降
 ス沢とは不思議な名前だ。酢沢、簾沢がすぐ思い浮かぶ。ス沢の最初の枝沢は下流部に金気の多い水を落としている。この水は落ち葉を黒く腐らせていた。これが酢沢の由来なのか。それとも、岩の沢床が延々と続くこの沢は、スダレのようにナメ落ちるその水の白さを表わした簾沢なのか。ス沢の水量はそう多くない。全体には岩床の続くナメの沢といっていいだろう。だが、変化のある滝が次々に現れるので遡行に退屈することはない。ただ、その倒木の多さによりス沢の美観が減じられているのが残念だ。この倒木が一切合財流されれば、ひときわ麗しい美女がそこに現れるものと思う。それでも、随所に現れる黒い滝は美しい。全体には、
34mぐらいの滝が多いが、その中に苔の付いた大きな滝も現れる。だが、順層の階段状滝が多いので登攀の難しさはない。標高1320m付近の最も大きな滝10mは、滝右の岩を登ることができる。天井の消失した雪渓を過ぎてさらに登ると、ス沢は、標高1600m付近で突然笹原となり、沢形を失う。水音が絶えて笹原をさらに20mほど登ると目立つ大岩がある。我々は、ここを源頭の岩と名付け、引き返すことにした。
 出発が早かったのと、途中の10m滝でロープを使わなかったのとで、遡行時間が短かった。そのため、1時間少し早く源頭に着いた。出合からは、約3時間である。ホイッスルを吹いてス沢ノ頭(1927m)から下降するAコースの仲間を呼んだ。時間が早いのだろう。応答はない。予報通りに、この頃から雨がぱらつき始めた。再び広河原へ向けて下降を開始した。この頃には、午後からの泙川の増水が気になり始めていた。

1)文献によっては、泙川(たにがわ)とある。

コースタイム
5月22晴れ
ニグラ沢出合手前11:00−泙川入渓11:30−ニグラ沢11:35−堰堤上11:5512:17−6m滝12:34−湯之沢12:41−ス沢出合14:18
5月23
ス沢出合対岸テン場06:16−二俣06:41−二俣(1:307:0810m滝07:38−二俣(1430m)08:17−源頭(1600m付近)09:0423−ス沢出合対岸テン場11:1639−湯之沢13:09−林道(ニグラ沢出合上)14:25


5月22日 泙川(三俣沢)

泙川初めての滝6m 右を巻い


湯之沢出合付近 滑りやすい岩床を渡る

手積みの堰堤が見える湯之沢 遡行をそそる雰囲気がある


 花崗岩のスラブが現れた

スラブ滝3m 左の岩に固定ロープがある。新緑がまぶしい 

この先はゴルジュ さてどうするかな


滑りそうな沢床を何度も渡渉する

ナメの横でひと休みする


こんな雰囲気の沢が続く新緑が沢を被う

ス沢出合が近付いてくると沢が開ける。広河原だ。

ス沢出合対岸にテントを張ってのんびりと


焚き火の炎が立ち。豪華なステーキの宴会が始まる。あー来て良かったな

5月23日 ス沢

前方にス沢最初の滝 3mナメ滝

10m滝 右の窪を登れば落ち口に出られる  標高1320m付近

10m滝上の5m滝 左の段々を登った

二俣上の二段8m滝 下部は水流沿い上部は右の岩を上がった

天井の消えた雪渓の間を通って 前方には5m滝  三俣状付近(1520m)

三俣状の本流には5m滝 そのすぐ上は階段状12m滝

源頭の大岩から下流を振り返る ここで水は涸れ笹が現れる 1600m付近


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