10.01.31  遡行図について


 沢を遡行したら必ず遡行図を描くことにしている。理由は幾つかあるが、そのひとつは、遡行図を描くことによって、初めてその沢へ行って来たという実感が湧くからである。もうひとつは、ささやかな遡行図であっても、それを利用する人があるのではないかと思うからである。後者は、HPに自分の遡行記録を公開しているために出てくる理由である。
 必要に迫られて、過去の遡行情報をインターネットで調べると、遡行の記録は多く出てくるが、遡行図を一緒に掲載している記事は極めて少ない。それは、遡行図を描くことが、なかなか面倒なためだろうと思う。遡行図を描くための情報を遡行中に収集すること、そして遡行後それを図形化して残すこと、どちらも根気のいる仕事である。特に、沢の遡行中に情報収集していると、満足に沢を楽しむことができなくなるという弊害もあるだろう。だいたいにおいて、遡行図を同時に掲載している遡行の記録は、詳しく書かれている場合が多く、その利用価値が高いことが多い。
 「遡行図を描くことによって、初めてその沢へ行って来たという実感が湧く」というのは、遡行図を実際に描いてみた人でないと分からないかも知れない。例えば、楽しい遡行が終わって次の日、遡行の状況を思い出そうとしても、断片的にしか思い出せないことがある。特に、記憶力が減退している私のような高齢者は、ひとつひとつの状況の前後関係さえも定かでなくなってしまうことがある。ひとつの遡行を反省的に振り返ることが難しいのだ。沢へは、行って来たのだがその遡行を立体的に思い出せない。そのときそのときで、全てが消えてしまう。悲しいことである。だが、遡行図を作ることによって、沢の状況が自分の頭の中に再構成されて来るのである。逆に言えばそれができなければ、遡行図が描けないということになるのだが。遡行図を作るときに、遡行した沢が追体験されるのである。そうなると、遡行の細かい状況までが自分の記憶の中によみがえって来る。そこで、「初めてその沢へ行って来たという実感が湧く」のである。これはなかなか楽しいことだ。遡行図を描く人の特権だろう。
 遡行図を描くのは、確かに面倒で苦労の多いものだが、そのコツを覚えてしまえばそう難しいことではない。先輩たちの遡行図の描き方は、遡行中に情報を耐水紙に鉛筆書きするというのが一般的のようだ。だが、この方法は結構むずかしいと思う。遡行中に記録するので多くの情報を盛り込めない、正確を期そうとすれば時間がかかってしまう、という問題がある。遡行中に、正確な沢情報を要領よく取り込むには、遡行図を作成する人なりの工夫が必要になる。私は、ICレコーダーを使うようにしている。ICレコーダーを胸のポケットに入れ、歩きながら沢の情報をレポートするという具合だ。


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