くろくらがわ、ひのきぼら

玄倉川、檜洞(桧洞、檜洞沢)
2009年11月22〜23日 
沢登り同好会さわね
西嶋さん、下野さん、ガクさん、園田さん
タケさん(ゲスト)、高橋

遡行図

 玄倉ダム発電所前 水が碧い

プロローグ
 今日は、ゲストのタケさんを含めて総勢6人の参加になった。最近の遡行では珍しく多くの参加者だった。今回の世話人高橋としては、うれしいことだ。タケさんこと高橋武さんは、北海道転勤の間、北海道の山々を登り、スキーを楽しんできた人らしい。世話人高橋と同姓なので、名前の武(タケシ)さんをタケさんと呼ばせてもらうことにした。若い頃は、登山を本格的に楽しんできた方のようだが、年齢とともに同行者がいなくなり「さわね」の門を叩いたとのこと。さて、入会してくれるものやら。沢登り同好会さわねは冬の山も登っているが、名前のとおり春から秋のシーズンは、沢を歩いている。さすがに、11月になると、気温が低くなり自然に沢からも遠のくようになる。だが、丹沢の沢は、11月末までは水もまだぬるく、沢を歩くことができる。
 今回は、丹沢の名渓、モチコシ沢、同角沢、ザンザ洞を擁する玄倉川本流を遡行してユーシンロッジへ泊り、次の日は、檜洞を遡行し西丹沢へ降りることにした。かつて、檜洞沿いには檜洞丸(1601m)へ登る登山道があったというが、現在は沢屋以外には歩く人もいないだろう。昭和46年の『丹沢』山と渓谷社には、このルートのガイドが記されている。

11月22日 玄倉川遡行
 玄倉川沿いの林道、玄倉林道は、現在、青崩洞門の先が通行止めになっている。我々は、 青崩洞門の前から窪を下がり玄倉川の河原に降りて沢を歩くことにした。林道の通行止めによって、かつての秘境に戻りつつあるユーシンの沢を歩こうという算段である。降り立った玄倉川は渇水期のためか、水量が少なくその迫力を欠いていた。伏流を歩いていくと水量が増し、右岸の100mほどの岩壁を過ぎると、透き通った碧い水が現れてくる。水量は、例年よりかなり少なかった。小滝が左にある巨岩帯を過ぎ、やがて右岸が再び100mの岩壁になる。ここから、沢は右へ曲る。深い谷から空を仰ぐと紅葉が美しい。そのすぐ先で、左の岩の狭い割れ目から水が流れ出している。モチコシ沢の出合だ。割れ目の間から、モチコシ沢の大棚60mが見える。狭い割れ目を遡ると、立派な大棚を仰ぐことができる。ここを登る沢屋もいるようなので、見上げたもんだと思う。万年初心者の高橋から見れば別世界のようだ。
 このモチコシ沢出合を過ぎた先に、かつては丹沢黒部と呼ばれたゴルジュがある。だが、今はその上流にダムができているので水量は少ない。特に今は渇水期でもあるためか、通年より水が少なくゴルジュの通過は容易だった。だが、それが、今回の遡行の狙いでもあった。水の多い夏期であれば、濡れネズミにならなければここを通過できない。ネットの情報によれば、泳がなければ通過できないはずの幾つかの淵も、埋まって浅くなっているという。そんな訳で、11月末という季節はずれに丹沢黒部を歩くことにした。とはいえ、その面影は十分に残っていた。幅広の2mスラブ滝のすぐ先で、淵に行く手を遮られる。夏なら泳ぐところだろが、今は、そうはいかない。ここの小さな巻きと、この先のトイ状滝のトラバースでメンバーが足元を滑らせて、あわや事故というところを何とか切り抜け、ゴルジュを通過したのだった。少し大げさだけど。
 玄倉ダムの手前で林道に上がり発電所を過ぎ、蛇小屋沢を下って発電所の橋の下の河原に降りた。その先で、3mほどの堰堤を右から残置ロープで越え、ゴーロの河原を歩く。大きく右へ曲るところで左から水量のある立派な支沢が入る。その先で、左から10mほどの滝が落ちている。ここが、沢登りで良く知られた同角沢(ドウガクサワ)である。この先に上の林道から玄倉川の深い谷へ降りる踏み跡がある。その近くの河原の石に、同角沢の出合に向けて花束が添えられていたのが印象的だった。同角沢で遭難した人の遺族のものだろう。表丹沢の水無川本谷でも、出合近くの堰堤の上に、花が添えられているのを見ることがある。毎年、お盆の頃だ。沢が左へ曲り、趣のある暗い廊下を過ぎると、その先で急に明るい河原になった。なにか、別世界へ飛び込んできたような変わり様である。はるか前方には、大きな堰堤が見える。鉄の堰堤を左から越え、その先の河原を疲れた足でさらに歩き、ようやく四時ごろに六人は、ユーシンロッジに着いた。
 テント持参だったが、その日の夜は小屋泊りで焚き火の無い夜になるはずだった。だが、高橋の提案があっさり受け入れられ、小屋下の檜洞の河原で焚き火をすることにした。火を焚たけば、みんなの会話も弾む。冷えた体も温まる。濡れた衣服が乾く。焚き火は欠かせない。落としたヒノキの下枝がふんだんにあった。その日は、タケさんのさわね入門の動機などを興味深く聞いた。タケさんの人柄を思わせる会話だった。ガクさんの食頭になる本格的カレーライスで腹が満たされた。今日のカレーは、人生の経験の中で一二を争う絶品だった。だが、酒に舌を奪われたみんなには、どうだったのか。そして、いつものように、足りない酒を他人の持ってきた酒壷に求めた。さわねの男性陣の職業は様々である。人生を経てきたこの職業の違いが、それぞれの行動を律しているように見えるのが面白い。焚き火の前に一人寝て、二人は去り、最後は三人でどうでもいい話の続きをして、酒が切れたところで10時半ごろ就寝にした。少し雨が降り始めていたが、次の日の朝には、上がっていた。

11月23日 檜洞遡行

 ユーシンロッジから檜洞の左岸をトラバースする踏み跡へ入る道順が分かり難い。ロッジとトイレの間の広い道を入る。明治薬科大学の小屋を左に見てしっかりした山道を歩く。小さな窪に降りたところで、左の発電施設への道を離れ、右の微かな踏み跡に入る。ここが間違いやすい。発電施設の小屋の上を通るこの踏み跡は、ほとんど歩かれていないようで薄い。発電施設への立派な山道へ入ると、行き止まりになってしまう。そのときは右手から斜面を登り、左の支尾根をまず目指し、この支尾根を20mほど登ると正規の踏み跡に出る。ここには矢印の看板がある。檜洞の左岸をトラバースする踏み跡は、途中消失している箇所があり、ここでは一度下へ降りる。結構難しい箇所のある踏み跡を1時間近く歩くと、右手にヒノキ林が出て登山道のように歩きやすくなる。「金山谷ノ頭へ」のしっかりした道標がある。その手前20m戻った所が、石小屋沢出合である。
 5年ほど前に、石小屋沢を単独遡行したことがある。その遡行は、中盤の大きな滝で高巻きもままならず、高巻きから沢へ戻るときには方角を完全に見失い、うろたえた覚えがある。無残な敗退だった。その先の檜洞の遡行は、初めてだ。今日は石小屋沢の出合から遡行開始だ。石小屋沢の出合は分かり難いが、大岩があり、ペンキで書いた「石」という文字がかろうじて読める。

 檜洞は、ダイナミックで美しい沢だった。岩質は、小川谷廊下と同じものだろう。小川谷は、檜洞の西尾根、同角山稜の西側に位置する。いわば尾根一つ隔てた隣の沢だ。巨大な石英閃緑岩が散在し、ところどころに美しい滝やナメ滝、そしてゴロタの滝を見せる。水に磨かれた岩肌は気高い艶を見せ、流れる水はあくまでも碧い。沢幅は広く明るく、水量は多い。支沢は、どれも豊富な水を入れ、ときには滝を懸けている。本流、中流域の連続するナメ滝は、日本庭園を思わせる。と言うよりは、日本庭園の着想が得られたと思わせる景観を呈している。檜洞の美しさを言葉で記そうとすれば、絶望的に難しい。下に掲載した幾つかの写真によって、その全容を想像してほしい。美しい谷、檜洞。
 檜洞は、近年あまり沢の遡行対象とはなっていないようだ。ネットの情報も少ない。だが、なかなか楽しめる沢だ。林道も通行禁止なので、檜洞は益々秘境に戻るだろう。表丹沢とは違う静かな沢が好きな方にはお勧めしたい。今日はトラバース道で迂回したが、石小屋沢の手前までには、幾つかの難しそうな滝と釜が上から見えた。ユーシンロッジの裏から入渓して、これらの滝をすべて登れば、充実した遡行になるだろう。この場合は、沢の途中で一泊することになる。
 最近では、檜洞沢と記す人もあるようだが、洞は沢と同義なので檜洞が正しいようだ。昭文社の『山と高原地図・丹沢』、ヤマケイのアルペンガイド『丹沢』でも檜洞とある。
 檜洞遡行は、経角沢の標高1300m地点で終了。そこから南西のコルを目指して稜線へ上がった。登山道を檜洞丸下の分岐へ歩き、そこからツツジ新道を降りて西丹沢自然教室へ降りた。全員が疾風のごとく急坂を駆け下り、間に合わないはずのバス時間に無理やり間に合わせた。

コースタイム
11月22日
玄倉10:15−青崩洞門12:00−玄倉川入渓12:05−モチコシ沢出合12:35−ゴルジュ幅広3m滝13:01−ダム前林道13:50−発電所橋下再入渓14:00−同角沢14:52−ユーシンロッジ16:00
11月23日
ユーシンロッジ08:45−石小屋沢出合09:42−5m滝09:50−ユーシン沢出合10:18〜29−4m滝10:31−魚止ノ滝11:51−標高1090m12:32〜47−下駄小屋沢出合13:05−二俣・乗越沢出合、左俣経角沢へ13:13−標高1300m13:55〜14:09−稜線鞍部14:16−ツツジ新道分岐15:03−河原16:19−西丹沢自然教室16:56


11月22日 玄倉川の遡行

 玄倉川 モチコシ沢出合前


 下流を振り返って 深い谷になっている


 モチコシ沢出合 奥に大棚が見える


 ゴルジュ 幅広2mスラブ滝 左を回り込んで簡単に越えられる


 ゴルジュ 深い淵にはばまれ、右岸を巻く。滑りやすいハングした岩を懸垂下降で降りる。


 ゴルジュ出口3mトイ状滝  岩のトラバースで滑りやすい。


 玄倉ダムの上流 巨岩帯 水は少ない。


 同角沢出合の滝10mF1 難しそうな滝だ


 同角沢出合でひと休み なかなか雰囲気のあるところで、ゆっくりしたい。


 同角沢出合先の3m滝 この先の河原の石に、同角沢へ向けて生花が添えられていた。


 廊下の出口 廊下を出ると明るい河原が広がっている。その遠方に堰堤が見える。


 堰堤の上の河原を歩き、今日の泊り場、ユーシンロッジへ急ぐ


 今日も焚き火を囲んだ宴は、徐々に盛り上がって行く。


11月23日 檜洞の遡行

 ユーシンロッジの朝を出発 お世話になりました。


 休眠中のユーシンロッジ。非難部屋を使わせて頂いた。水道もあり便利。トイレもきれいに掃除されていてありがたい。


 途切れたトラバース道を慎重に降りる。


 石小屋沢の出合 石の赤ペンキが微かに「石小」と読み取れる。ここから檜洞へ入渓した。


 最初の5m滝 岩が磨かれていて、水流沿いの登攀は難しい。


 5m滝は、左の岩から取り付き、中盤で本流側に一歩、やや難しいトラバースをするとテラスがある。この先の一歩のスタンスが高く、ハンドホールドも無いので難しい。西嶋さんの膝ステップを借りて高橋が先行。ロープを出す。ここが難しければ滝を10m戻った右岸の窪から巻くことになるが、降り口はこの滝の上の吹き割りの滝4mの上になる。


 5m滝の落ち口へ降りる。滑りやすいので注意。


 5m滝の上には、3mナメ滝 大きな釜がある。左から巻いた。


 吹き割りの滝4m ここは、右端から簡単に登れる。


 ユーシン沢出合付近の本流 先に4m滝が見える。


 ユーシン沢出合上の4m滝 深い釜があるので、右岸を巻いた。難しくない。この上は多段のナメ滝になっている。


 先の4m滝の上からは連続したナメ滝(3、4、3、2、3m)になる。この辺りは、日本庭園の趣がある。


 3mナメ滝 苔が生えていて美しい。いつまでも留まりたい所だが


 大きな岩が散在する。水は碧い。


 大きな岩のゴロタ滝を越えて ここでは、人の存在は小さい。


 ザンザ洞出合の手前  岩々と対話しながらの歩行が楽しい。


 ザンザ洞の出合 意外と小さな出合で水の量は少ない。


 こんな滝があったり 傘滝3m


 こんな滝が合ったり。恐竜の頭のような岩があったり。 恐竜滝4m


 前方5m滝右の大きなクジラ岩 人が小さく見える。


 魚止ノ滝7m ここは、左の岩の裏を簡単に巻ける。ここから滝が連続する。この滝の前には右から支沢が入る。


 魚止ノ滝の上は、五段滝(2、2、4、4、7m) 最後の滝は7mトイ状滝。


 五段滝の4m滝 一番奥の滝がトイ状7m滝で直登は難しい。右のカンテを巻く。


 7mトイ状滝を右から 水流沿いはとても登れない


 美しく情緒のある3m滝 左を巻いた


 金山谷ノ頭へ上がる乗越沢を、右にやり過ごして経角沢へ入ると巨岩は消える。


 檜洞とは景観が変わった経角沢 落ち着いた雰囲気になる


 経角沢には小さな滝もあって楽しめる


 最後の詰めは前方に見えるコルを目指す。標高1300mの沢から


 最後の詰めの前にひと休み もう結構疲れている。大きなブナのある林の中で


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