奥鬼怒 片品川北岐沢

2009年9月12〜13日 
沢登り同好会 さわね
下野さん、園田さん、高橋

遡行図

 マユミ  標高1700m付近

9月12日
 ここしばらく天気が良かったが、どうしたわけか下野、園田、高橋の三人組は雨を引いてしまった。明日は天気が回復するとの情報を信じて少々暗い思いで北岐沢へ入渓する。入渓地点は奥鬼怒林道がヘアピン状にカーブする所だ。出足の踏み跡は濃いがすぐに分散する。笹を分けて、やや下流に下がった位置に入渓した。落ち着いた静かな沢のようだ。
 二俣(1590m)までは、4〜8mの滝が次々に現れて退屈しない。どの滝も、自身が滝であることを主張しない穏やかさを備えている。母性的な優しい沢だ。すでに廃れたことばを使えば癒し系ということになるだろう。だが、もしかしたらこの印象は、当日の雨模様が影響していたかもしれない。二俣までの滝で直登が難しそうな滝は、狭い岩の間を水勢激しく落ちる8mほどの滝と、そのすぐ上の四段12m滝だろう。8m滝は、水流沿いも登れるかもしれないが少し冒険心が必要だ。我々は冒険を避けて左隅の細流を辿る。ここならホールドは堅い。何か悪いことでもしたような気持ちで、あっさりと8m滝の落ち口へ上がった。その上にある四段12m滝は、 逆層の滝を登らずに右を小さく巻いた。16m大滝も高橋には難しい。この大滝はこの沢の盟主で、二俣(1590m)の右俣から落ちる。こちらが本流だ。ここは登れるという人もいるようだが、実際には登った記録は見ていない。水流左にホールドを追えるが、落ち口付近は岩の脆さも見える。あの上でホールドに十全に体重を掛けられないとすれば、万年初心者の高橋はどうすることもできないだろう。この大滝の巻きは、左岸を見ながら沢を戻る。落ち口方向へ延びる支尾根に、できるだけ楽して上がれる地点を探した。ここだと思ったところに近づくと、すでに明瞭な踏み跡がある。所詮、選ぶ道は同じだ。途中踏み跡は分散しつつも支尾根のリッジに行き着く。リッジを上がり左俣のトイ状滝が見える位置が、大滝落ち口の上だ。沢床まで5mはあるだろうか。ロープを出そうと思ったが、踏み跡は上流を目指し、窪を降りている。幸い木の根に助けられ降りるルートがあった。
 16m大滝の上の顕著な滝は、4mナメ滝だ。沢が鋭く左へ曲るところにある。傾斜はゆるい。沢床がブロック状の節理が入る黄土色の岩に変わる。同様な岩質の滝を形成した支沢が左から入る。大滝上から30分だ。水流は細いので見逃してしまうかもしれない。このすぐそばの右岸の段丘に幕を張る。雨が小降りになっていたので、園田さんが枯れ木の機嫌をとりつつ炎をようやく引き出した。だが、雨は執念深く降り続き、ついに根負けして我々はタープの庇護の下に入る。酒で体を暖めていると雨は本降りになり、今度はあろうことかタープの縫い目から雨が漏ってくる。まさかの高橋は、せっかく持ってきた缶ビールも開けず雨漏りに神経をすり減らす。雨は時に弱く時に強く、夜を徹してタープを叩いた。雨の滴る下でゴアテテックスに包まれた下野さんは豪快に寝息を立てていた。

9月13日
 やっとのことで白々と明ける朝だった。弱くタープを叩く音がする。まだ雨が降っているのか、風で樹木の水滴が振り落とされるのか。天候が悪いと朝の動きも悪い。しぶしぶ冷たい靴の紐を締めるころ、園田さんが「青空だ」と叫ぶ。とたんに動きは活発になりタープの撤収を急いだ。予定より遅れ8時ごろの出発になった。
 歩き始めてすぐ小さな滝になる。ブロック状に節理が入る黄土色の岩で出来た滝だ。この沢の特徴的な景観である。ブロック状に岩が割れるので、滝は多段になり水は叩かれて白さを増す。この辺りから沢床もこの岩になり、ナメやトイ状の流れが連続する美しく特徴的な景色を造り出してくる。時折差し込んでくる日差しが、水の流れに反射して、沢をまぶしい黄金色に染める。北岐沢を訪れる人々は、これを求めてやって来るのだろう。
 6m多段の滝を過ぎると二俣(1650m)になる。この先で、右から顕著な支沢を入れると立派な釜のある4m滝になる。その先で、堰堤のように見える二段5mの黒い滝に行く手を塞がれる。滝の右の階段状を登れるが岩は脆い。いくつもの小滝やナメ、ナメ滝と遊び、時々に現れる支流の水で喉を潤して歩く。二俣が連続して現れる。どちらも右へ入る。1790m付近の二俣を右に入ると、急な沢に小滝が連続する荒々しい沢に変貌する。100mぐらいは続いただろうか。その先は次第に穏やかな登りになる。右右へと二俣を取れば小松湿原に行き当たる。針葉樹林の間にぽっかり明いた湿地である。天には青空がのぞいている。
 湿原から稜線へは、来た沢を戻り1910mの二俣を左に入ることにする。だが、沢はすぐに遡行が難しくなり左の支尾根に逃げた。このあたりは、稜線に向けていくつもの窪や沢が複雑に伸びている。最初急登だったが次第に緩やかな傾斜になる。樹林の倒木と藪を避け、歩き易いところを選んで南に向かって歩く。平坦になってしばらく歩くと登山道に出た。登り始めてから30分ほどである。針葉樹林帯で展望は無い。
 稜線近くを辿る登山道をブナ沢の下降点を目指す。昼近くになっていたので稜線で昼食にした。この頃には強風となり気温も下がって荒々しい天候に変わっていた。幸い雨は降っていない。ブナ沢は左沢へ下る予定だ。
 起伏の少ない尾根道のため、ブナ沢の下降地点が分かり難かった。下降点は2069mを降りた鞍部だが、2069mを確認できる道標はないし、樹木に視界が遮られ周囲の地形も分かりにくい。だが、下降地点を行き過ぎると左右切れ落ちたやせ尾根になるので分かる。案の定、下降点を行き過ぎて戻ることになった。だだ広い鞍部から北西に方角を取り大きな羊歯を分けて下がると5分ほどで沢形に行き当たる。わずかに水を落とすこの沢形を辿り、急斜面を苦労して降りていくと左から水のある小さな沢が入る。そのすぐ先で沢は二俣になるが、左岸から入る沢には水がほとんど流れていない。標高1800mぐらいから滝が現れる。滝らしい滝8mは、ロープを出そうと考えたが園田さんがリードを務め笹を掴んで右岸のスラブを下降した。この下もトイ状の滝が続く。下の8mトイ状滝は、左岸の巻き道を辿って降りることが出来た。ここから林道はすぐである。堰堤を左岸から巻いて沢へ戻らず踏み跡を辿るとあっけなく林道へ出た。奥鬼怒林道のトンネル入り口の前だ。
 ここからは、長い林道を四方山話で時間を潰しながら歩いた。途中、猿沢橋で二人の釣り人と短い会話を交わした。二箇所ほど鹿の防護柵を越え、林道を歩き始めてからちょうど二時間で大清水に到着した。午後四時半を回っていたため人影はまばらだった。




 サンライズ出雲 熱海5:45乗車 寝台車の車窓から。片品村の大清水に9:30集合のため寝台車を使う。



9月12日 入渓点から16m大滝、テン場まで

入渓地点の景色 穏やかな渓相。これからの沢の景観を連想させる。  水は溶けた成分のためか、幾分にごり青みがかって見える。


二条6m滝 大きな釜があるので右を巻いた。
二条5m滝 滝にかかるワイヤーロープを掴んで登る。滑りやすい。


四段12m 8m滝のすぐ上。ここも簡単に右を巻ける。
8m滝 直登するには結構勇気がいる。左の岩の細流沿いを登る。難しくない。


幅広3m しっとりとした落ち着きを見せる。
16m大滝 二俣の右俣(本流)から落ちる。ここは、左岸を少し戻って、落ち口に伸びる支尾根に取り付いて登る。

岩肌は結構すべる。 4m滝 沢が左へ曲る。この上15分ほどに右岸から沢が入る。そこをテン場とする。



9月13日 テン場から小松湿原、ブナ沢下降


特有の節理を見せる黄土色の滝
沢床が黄土色の岩になる。ナメがあり、トイの流れ、ナメ滝がある。

6m段々の滝 岩肌は磨かれている。 釜のある4m滝 釜の左をまいて水流左を登った。

こんな小滝も現れて。 左岸から支沢が入る。1750m付近

小松湿原 沢の二俣を右、右へと入れば湿原に出る。鹿が遊んだ跡が見えるが、その姿は見せなかった。


小松湿原
ブナ沢 8m滝 右岸を笹を掴んで降りる。

ブナ沢 三段トイ状滝 下から2、2、1m。この下はすぐ8mトイ状滝となり、林道は近い。


コースタイム
9月12日 
大清水11:10−林道ヘアピンカーブ(入渓点)13:10−二俣16m大滝14:56−16m大滝上15:11〜15:21−右岸から支沢出合(テン場)15:50  
9月13日 
テン場08:10−二俣1650m08:29−左岸から支沢出合08:37−二俣1770m09:45−二俣1790m09:54−二俣1790m09:54−二俣1890m10:40−小 松湿原11:00−登山道11:37−昼食11:55〜12:16−ブナ沢下降点12:37〜12:54−二俣13:37−8m滝下14:08−トイ状滝8m下14:21〜14:32−鬼怒川林道14:34−大清水16:35



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