谷川 湯檜曽川白樺沢

2009年8月15日 晴れ
Kさん、ガクさん、高橋

遡行図

 クガイソウ 白樺沢、ケサ丸沢出合手前付近 

プロローグ
 個人山行でKさん、ガクさんと谷川連峰の沢遡行へ出掛けた。8月2日のさわね行事、中ア・西横川遡行(現地雨で中止)の前泊の時に出た話を高橋がまとめ計画した。さわねは恒例行事、お盆合宿を計画中だったが、日程の合わないKさんとガクさん、そして3泊4日の強行軍に付いていけない軟弱な高橋が消極的な結合をはかった結果だった。
 今年の岳人7月号で白樺沢の紹介があった。「やさしいゴルジュ、小滝群と遊んだ朗らかな一日」と題し、うら若い沢登り初心者の女性が書いた記事だった。これなら行けるんじゃないか、と高橋は考えた。そのうち、白樺沢の支流、ケサ丸沢はもっと人気のある沢だという情報を得て、せっかく谷川に行くのだから二本遡行しようという気になった。三人の日程をうまく合わせ、15、16日に遡行ということにした。14日夜はロープウェー駅で前泊だ。
 だが、白樺沢は、やさしいゴルジュでもなく、小滝群と遊ぶところでもない。力を入れて遡るふつうの中級の沢だった。万年初心者の高橋にとっては、小滝群と遊んでいる余裕はなく必死に滝の弱点を探し、次々に現れる5、6mの滝を越えるのに精一杯だった。5mや6mの滝を小滝と言うのだろうか、ひとつの沢で5、6mの滝を30箇所も懸けているのだから、まあ大体の想像はつくだろう。やさしいゴルジュも我々凸凹トリオは巻いてしまったのだ。

アプローチ
 14日夜は谷川岳ロープウェー土合口駅のロビーに宿泊。Kさん、ガクさんと楽しい夕食を採った。ビールの自動販売機、トイレ付きで快適なはずだが、夜中0時ごろに水上駅に到着したらしい乗客がタクシーでドヤドヤとやってきて、しばし喧騒。早い者は午前3時に、熊よけ鈴を平気で鳴らしながらロビーを出て行く者もいる。いやはや。我々は、明るくなる5時ごろ起床、めいめいに食事を採って6時15分に発つ。土合駅へ戻るように車道を下がり、土合橋前から湯檜曽川本谷沿いの新道を歩く。天気予報どおり快晴の天気だ。ときどき左手に谷川岳の尾根を望みながらの歩行だ。マチガ沢、一ノ倉沢、幽ノ沢、芝倉沢と沢を越える。かなりのアプローチなので、水のある沢でときどき休止。土合橋から2時間10分で武能沢に辿り着く。この辺でテン場を探すがなかなか見つからない。新道から武能沢を5分ほど下がった左岸の沢沿いに平坦地があったのでそこをテン場と決め。荷物をデポして遡行に入る。

湯檜曽川遡行
 テン場から湯檜曽川本谷はすぐだ。本谷を遡行開始するとすぐゴルジュにさしかかる。行き止まりには魚止めノ滝が堂々と構えていて、人間も魚止めされる。ここは、滝の少し手前の残置支点を探す。支点に張られたスリングを掴んで突き出た岩を乗り越す。その上で残置の簡易アブミに足を通してさらに細かいスタンスに体重をあずけ、最後はプッシュで重い身体を押し上げる。セカンドにはぜひお助け紐を出してあげたい箇所だ。その上は、太いフィックスロープが下がっているので、力まかせのゴボウで上がれる。だが、ここでは、地球の引力の大きさを思い知らされることになる。相当疲れる。ここは全員が真剣モード。魚止めの滝の通過は、残置支点がなければ自分には全く手も足も出ないところだろう。
 右岸に上がってからはブッシュ内のぬかるみを本谷沿いに10分ほど歩くと自然に本谷へ下がる。本谷の広いゴーロをしばらく歩くと、沢が左へ曲がりまた右へ曲がり返したところで、横幅の広い低い滝が現れるとその上で沢床がスラブになる。このスポットは、荒々しい魚止めノ滝の近辺とはまた違う穏やかな空気を漂わせている。清らかな流れがスラブの上をゆったりと流れていくさまを見ると、誰もが幸福に浸ってしまうだろう。白樺沢の出合はここからすぐだった。

白樺沢のケサ丸沢出合まで
 白樺沢に入るとじきにゴルジュとなる。ここは通過できるというが、釜も深く水勢もある。滝も後続は高いので苦労するだろう。ガクさんはゴルジュ通過にこだわっていたが、不安の方が大きい。ここは、あっさりと右岸のテラスへ上がり笹とブッシュを頼りに落ち口をかわす。この先、立派な釜のある3〜6mほどのスラブ滝をその弱点を探りながらいくつも通過する。左岸から続けて二本の沢を入れると白樺沢とケサ丸沢の二俣は近い。二本の沢の間、左岸にトラック一台分の雪渓があるのを見つけ、何か嬉しくなる。前方にはもう大滝が遠望できる。この辺りは、両岸が緑の草付きで大きく開け、その先には蒼い空が広がっている。自然に楽しさが湧き上がってしまうところだ。Kさんもガクさんも子供のようだ。ホールドの細かい5m滝を左から越えると二俣になる。

30m大滝
 30m大滝は、写真で見るのとは違いその大きさに圧倒される。30mというが、40mぐらいには見える。万年初心者である自分にとってはここが第一の難関だ。ひと休みしてから、最も取り付き易い左の乾いた岩をフリーで中段のテラスへ。ここから2mほどの壁を上がるところが、あと一歩が難しく、慎重に岩を這い上がる。その上で、Kさん、ガクさんを確保する。その先は、上部が良く把握できないので、ロープを引いて階段状のリッジを登攀する。高度感たっぷりで十分恐い。途中残置支点にランニングビレイを二箇所取って上部のブッシュでまた後続を確保。ここから、さらに草付きを落ち口へ1ピッチとった。ロープワークに慣れていないために、この滝だけでちょうど一時間を要した。傾斜が緩いとはいえ、高度感があるので白樺沢が未経験の我々は、真顔になった。スケールが大きいため、前方のルートが把握できず、手探りの登攀になる。そこには、小さな滝のルートを探索するのとは異なる難しさがあった。

白樺沢の手強い滝
 白樺沢は、4〜7mの滝を多く懸ける。数えてみると30箇所ほどに滝が懸かっている。5mぐらいの滝がほとんどだが、どの滝も曲がありその弱点を見抜かなければ簡単に登れない。どこも両岸は草付きなので簡単に滝を巻けないのも難点だ。今回はメンバーにクライミングの鬼・Kさんと、ガッツのガクさんが加わっていたので、軟弱な高橋は大いに助けられた。
 30m大滝上から7つほど4〜5mの滝を越えた所にあるハング滝5mは、手掛かりがないので直登は難しい。ガクさんが左岸の垂壁の割れ目を腕力で突破、Kさんが後に続いた。高橋は、右岸の斜面のブッシュを掴んで身体を上げ小さく巻いた。
 さらに、この滝から五つ目の5m滝は一見して難しそうだ。ガクさんとKさんは水流沿い右をシャワーで直登。落ち口手前で右へ逃げ、その上を落ち口へトラバースした。高橋は、左岸の草付きに入り巻いた。楽勝だと思ったが、意外に傾斜がきつい。素手で苦戦したので、愛用のドライバーをザックから取り出した。草付きとはいえ、ドライバーが深く刺さるので助かった。支点にして5mほどトラバースして落ち口へ出た。

 倒木の滝6mは、二本の倒木の間を登るのが最も確実だろう。ここを登った。落ち口を越えたところで倒木を右へ越える。幹が太いのでバランスが取りにくい。木の節が有る落ち口高さで越えたKさんは、楽勝だった。ガクさんは、同じルートを上部まで腕力で上がり倒木をかわした。それぞれに登り方がある。7mトイ状滝は、万年初心者の高橋には難しそうだ。ここは、意を決して左の細流沿いを登った。岩にザラがありフリクションが効く。中盤はホールドが細かくやや苦戦だったが、何とかホールドが拾えた。上部まで登らないで途中で左へ逃げた方が楽ちんらしい。ロープを降ろす間もなく、ガクさん、Kさんは、そちらのルートを選択して上がってきた。

 7mトイ状滝の上も、4〜6mの滝やいくつもの小滝が現れる。全員滝登りを堪能しながらも、いい加減飽きてきたころに、まず7mの垂直に近い滝に塞がれる。ここは、水流左上部に残置ハーケンがあった(ガクさんが見つける)。だがここは逆層気味でスタンスが安定しない。滝の中央は、シャワーを少し浴びるが、ホールドの細かい下部をクリアできれば上部を右へ寄り、何とか落ち口をクリアできそうだ。高橋が滝中央をトライするが、下部で滑って2mほどズルズル。その間に、ガクさんが滝左を果敢にアタックする。高橋はめげずに、二度目の挑戦で滝の中央から右へ入るルートを突破した。上部で行き詰っていたガクさんを引き上げ、同ルートを上がるKさんを確保した。

 さらに、この先では10m滝に行く手を阻まれる。10m滝は、仔細に見れば水流左にホールドがある。だが、下段4mにはホールドが見当たらない。落ち口も難しそうだ。両岸は草付きで深く、巻くことも難しい。事前の情報収集により、ここが遡行の核心と考えていた高橋が想像した通りであった。ここは、左岸のリッジを落ち口高さにある窪まで登りビレイを取り、さらにそこから落ち口へトラバースするルートを採ることにした。まず高橋が、次にガクさんが試登をしてみるが岩のヌルと逆層気味のスタンスに躊躇する。岩のヌルは高橋の周到に準備したタワシで取れるとしても、逆層は如何ともしがたい。ここで、クライミングの鬼、Kさんの真打ち登場となった。下部のリッジを右側から上がり、このリッジを左に回り込んで落ち口高さの窪へ向け、じりじりと高度を稼いでいく。リッジを左に回り込むことによって、逆層のスタンスを回避したことになる。窪に生えるブッシュでランニングビレイを取り、さらに落ち口へ嫌な草付きをトラバースした。途中にあるブッシュに二つ目の支点を取って、後続のガクさんと高橋を確保してもらった。ここのリードは難しい。高橋はそう思った。

 この10m滝でめぼしい滝は終わりのはずだったが、登山道の交差する直前で沢は二俣となり、両俣とも大きな滝を懸けていた。左俣は8m滝でホールドが乏しい。右俣はやや低く6mぐらいか。右の階段状を楽に登れるように見えたが、上部でバランスの取りにくい箇所がありやや停滞した。だが無事クリアして落ち口へ出た。白樺沢は最後まで気の抜けない渓であった。

下山
 二俣の上で登山道へ出てからは、山腹の旧道を歩き、白樺沢と武能沢の間の支尾根を新道へ向けて下がる。45分ほどで武能沢を渡る新道へ出た。今日は、武能沢を下がったところでテント泊だ。



アプローチ途中。芝倉沢から谷川連峰 湯檜曽川 魚止めノ滝手前、ゴルジュ入り口

魚止めノ滝 堂々とした魚止め。手前の岩窪を残置スリング頼りに右岸に上がる。上部には頑丈なロープが固定されていた。 湯檜曽川 幅広の小さな滝。この先はスラブの沢床になる。白樺沢出合は近い。

白樺沢 小ゴルジュとはいえ、突破を躊躇するふたり。高橋はすでに巻き道に足を掛けている。ここは、左の岩を上がり、笹とブッシュを掴んでバンドを落ち口にトラバースする。 6m滝手前の小滝。どれも立派な釜があるスラブの滝。滝の弱点を進む。両岸は深い草付きになる。


空が大きく開け、右に岩窪を落ちる支流が見えるようになると、二俣は近い。 二俣手前 釜のある4、5mの滝が続く


30m大滝 左の傾斜の緩いフェースをまず上がり下段のテラスへ。2mの岩を這い上がり、ブッシュで支点を作りロープを引いて水流際を上がる。そこから2ピッチで落ち口へ出る。大きな滝のリードに慣れていないため、時間が掛かる。メンバーとの意思疎通も十分とはいえなかった。今後の課題だ。
30m大滝 目の当たりにすると大きい。これからこの滝を登るのか、という漠然とした不安に襲われる。滝の直登は無論難しい。滝の弱点をいかに見抜いて上がるかだが、全員この沢は未体験なのでルートは手探りだ。

3m滝 こんな滝があったり 5m滝 こんな滝を登ったり

同5m ルートの読み方によって登れたり、登れなかったり。 5mハング滝 左岸の垂直の岩を4mほど上がった者、右岸から巻いた者それぞれ。

6m滝 ホールド豊富な右を登る。 5m滝 果敢にアタックするガクさん

5m滝 ここはやや難しいが、ガクさんが挑戦。落ち口手前で右へ逃げる手法でクリア。軟弱な高橋は、右の草付きを巻いたが、ここが結構傾斜があり足が滑る。慌ててドライバーを出しトラバースする。草付きだがドライバーが刺さってくれたので幸運だった。 倒木の6m滝 左の二本の倒木の間を登るのが最もやさしい。落ち口上で倒木を右へ乗り越すときにバランスを崩しやすい。

7mトイ状滝 うーん難しそうだ。ここは、意を決して水流左を登った。岩にザラがありフリクションが効くのが幸運。中盤はホールドが細かくやや苦戦した。途中で左へ逃げた方が安全らしい。ガクさん、Kさんは、そちらのルートを選択して上がってきた。


10m滝 直登は難しい。白樺沢の「核心」。右から巻こうと高橋とガクさんがトライするも、ヌメリと逆層の岩に躊躇して途中で降りる。
クライマーKさんがリードする。滝右のリッジを右から登り、左に廻り込んだあとに落ち口高さにある洞へ向けて上がる。洞に生えるブッシュにビレイを取って、さらに左上のブッシュにビレイして落ち口へ降りた。ここのリードは結構難しいぞー。

草付きをトラバースするガクさん。


コースタイム
ロープウェー土合口駅6:15−武能沢8:25〜9:40−湯檜曽川本谷・武能沢出合9:42−魚止めノ滝9:57−白樺沢出合10:24〜10:35−ケサ丸沢出合11:08〜11:18−30m大滝下11:18−30m大滝上12:18−5mハング滝13:05−6m倒木の滝13:53−7mトイ状滝14:03−7m滝14:28−10m滝14:48〜15:36−登山道15:51−武能沢16:35−テン場16:40(泊)



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