W-Climbersの山崎さん、大橋さんと念願の前川・大滝沢を遡行した。それにしても、やはり吾妻、山形は遠い。山崎さん、大橋さんは栃木県の鹿沼市から、高橋は静岡からの移動だ。梅雨の時期で天候が最も心配だったが、梅雨の合間で比較的安定した天候の下で遡行できた。これも全て山崎さんのお陰だろう。山崎さんとの沢は良く晴れる。前日は、滑川温泉近くでテントを張った。その夜には、星空も現れ明日の天候を約束してくれているようだった。深夜12時ごろ車の通過する音がした。おそらく沢登りの連中だろう。

 大滝沢は、様々なナメ滝とナメが次々に現れる魅力的な沢だ。どこか谷川のナルミズ沢を思わせるが、それよりも大きな滝とその数が圧倒的に多く、どの滝も変化に富んでいる。遡行の最終場面に現れる巨岩帯も遡行に色を添えてくれる。万年初心者の自分にとっては、登攀の難しい滝も多く、最後まで気が抜けなかった。時間を忘れて遡行終了点の二俣(標高1340m)まで、7時間を夢中で遊んだことになる。人気の沢である理由は、歩いてみればすぐに分かる。全く登れない滝はなく、何とか登ろうとするパズルを解くのが面白い。シューズのフリクションが良好であることも、この沢の遡行を面白くさせている理由だろう。水質のためだと思うが、多くの滝が褐色に染められ、沢を落ち着いた雰囲気にさせている。

 大滝沢は、入渓して10分ほどで現れる三段18m滝から本格的な滝が始まる。三段滝は見るからにダイナミックだ。大滝沢の水量を集めて、豪快に水を滑らせている。ここの通過がまず最初の課題だ。下から、4m、10m、4mの滝が続いているが、上段4mは見えない。「大釜のある下段を左のバンドからトラバースし、その上は右に移って、急だがホールド豊富な側壁を登る」との情報だったが、如何せん今日は水量が多い。水が恐くて下段落ち口を左岸に移ることができない。ここは右岸のホールドの細かい壁を登らざるを得ない。最初の番狂わせだ。だが、こちらは傾斜がやや緩いのが救いだ。明らかにホールドの細かい壁を、小さなクラック沿いに試登する。ホールドは、慎重に探れば手に掛かる。幸運にもフリクションは思ったより良好だ。傾斜の増す落ち口付近の細かいホールドを丹念に拾ってクリア。念のため、後続にロープを出したが、サクサク登ってくる。上段4mは右から問題なく通過。最初の課題を何とかクリア。その上には、今日の大滝沢を予感させる幅広のナメとナメ滝が早速その姿を見せる。なお、この三段滝中段の左岸からは、大きな沢が、滝になって出合う。この滝は、簾状に水を落とす美しい三段滝だ(5、6、10m)。
 三段の滝の先は、明るく開けた沢に4〜5mぐらいの滝やナメが続く。いずれも沢幅いっぱいに広がるその造形美には、驚きの声を上げることになる。どの滝にも釜が穿たれ、遡行者を容易に滝に近付けようとしないのがまた魅力だ。小さな滝だって、滝に近付けなければ登れない。高橋は、三段の滝すぐ上の4m滝の釜でさっそく泳ぐ羽目になった。ナメも沢幅いっぱいに広がる開放的で美しいものが多い。そんなナメとナメ滝を越えて行くと、やがて巨大な滝が雲の上から現れる。

 巨大だ。とりわけ滝下に立ってみると、上から落ちてくる滝水に押しつぶされそうな感覚になる。まさに圧倒的な迫力だ。文章では、なかなか落差100mと言われるこの滝の迫力を説明できない。山ひとつが、ナメ滝になっていると形容すればそれに少しは近づくが、それでも一割程度の接近だろう。特徴的なのは、滝水が集中して落ちる直瀑とは異なるナメ滝であること、滝の岩の起伏に倣って水流が柔らかな白い曲線を描いていることだろう。今回、この大滝の巻きは、滝を300mほど戻り右岸の赤テープから山道へ入った。山道を尾根の登山道へ上がると大滝展望台になる。ここから、さらに8分ほど登った辺りの下降点から沢へ下った。下降点を行き過ぎてしまうと、左に索道用の錆びた滑車が現れるのですぐ分かる。下降の踏み跡はしっかりしていて難しいところはない。沢へ降り立つ所で、6mぐらいの岩をクライムダウンになるが、ここも特に難しくはない。
(2010年7月の仲間の遡行では、大滝を直接高巻いた。大滝の下、右岸のルンゼから上がり支尾根をブッシュをつかんで10分ほど急登する。その後落ち口上をめがけてトラバース、草つきルンゼを二つ越えて、落ち口上へ出た。踏み跡はしっかりあるが高いので慎重さが必要。落ち口まで20分ほどの行程だ。) 大滝の巻き方は、メンバーの力量によって選択すべきだろう(10.07.25)。

 沢へ戻って眼前の10m滝を越え、堰堤状の6m滝そして5m滝を越える。いずれも釜がある。大滝沢は岩質の影響だと思うが、みな深い釜を持っている。じきに、ネコノ沢が左から淑やかな簾状6m滝を見せる。そこからホラ貝沢出合は近い。ホラ貝沢は、小さなナメ滝となって右から出合う。大岩の横たわる本流もやはりきれいなナメを見せている。この先、終盤の巨岩帯が現れるまでが、大滝沢のハイライトとなる。中央部がすり鉢状になった8mスラブ滝、ナイアガラの滝を思わせる10m幅広滝、すぐ上の第二ナイアガラ8m、12mヒョングリの滝、15m二条滝、滝の左に球状の洞があいた7m滝、いずれも特徴のある自然の造形物である。登攀のパズルの回答は一様ではない。

 すり鉢状8m滝は、左右とも傾斜のきついスラブで、遠目にはどちらも登攀が難しいように見える。だが、傾斜のある滝右へ近づいて見ると細かいホールドがある。山崎さんがここを慎重にクリア。後続が続く。計画を練る段階ではこの滝の通過を心配したが、予想よりは難しくなくひとつ安堵した。
 ナイアガラ10m滝は、沢幅20mいっぱいに広がり落ちるスケールの大きいナメ滝だ。この滝の直登は難しそうだ。右の流木を頼りに登るとの情報もあったが、流木の一部が折れていて頼りにできない。ここも、山崎さんが、果敢に右端からブッシュを掴んで落ち口へ、腕力頼りのトラバースでクリア。ここのトラバースは太目の枯れ枝の乗越で結構疲れる。山崎さんに頼んでロープを出してもらい、ゴボウで登れば楽ちんだったかな。第二ナイアガラ8m滝も難しそうに見えるが、右左とも登れた。左は微妙な傾斜で滑りそうだが細かいホールドを拾って何とかクリア。

 12mヒョングリ滝は、中央の凸スラブを直登する向きも有るようだが、万年初心者の自分には明らかに難しい、と言うより危険。ここは、せっかく有る右岸の巻き道を使わせてもらう。山崎さん先頭でやや脆い岩の登りから入る。5mほど上がれば難しいところはなく、沢への下降も問題はない。100m大滝を除くと最大の落差の滝を落とす15m二条滝は、今日は水量が多いためだろう圧倒される。ここは到底登れそうに見えない。だが、滝右寄りの傾斜が緩くなったルートが唯一の望みだ。しかし、今日は水量が多いため、水を避けるとすればさらに右寄りのホールドの細かいルートを登攀することになる。ここは、大橋さんがロープを引いて登ることに。容易に見える下段をクリヤすると、ホールドが細かい箇所に差し掛かる。ここは難しそうな右へ寄り過ぎてストップ、左にルートを取り直してさらに5m上がって無事クリア。後続の我々は、ロープを降ろしてもらってプルージックで上がった。

 洞があいた7m滝は、深い釜をへつって滝左下へ辿り着くのが先決だがこれが難しい。右は明らかにホールドが乏しい。かといって、左壁のへつりも難しい。山崎さんが何度かトライし、高橋もルートを追うが、無理だと判断した。滝を戻った左岸に登れそうな箇所があり巻くこともできそうだが、巻くとすれば結構な高巻きになる。時間が掛かりそうだ。ここは、釜左を泳いで大きな洞へ上がり、水勢の強い滝を右へ飛び越えて右の分流沿いを登る、という作戦を立て実行。まず高橋がロープを引いて釜左を泳ぎ、水際のホールドを探って、身体を引き上げた。続いて大橋さん、山崎さんが上陸する。高橋は、続いて水量の多い滝下の奔流を対岸へ飛び越えた。これができれば、後は何とかなる。ここから、右に枝分れした細い水流沿いを登る予定だが、第一歩が難しい。だが、水際に隠れた絶好のスタンスを探し当て、身体を預けてバランスをとる。そこから6mほどホールドを拾って何とかクリアした。ただし、結構水を浴びることに。後続の、大橋さん、山崎さんには念のためにロープを出し確保した。登りに時間が掛かってしまったために、体が冷えてしまった。この上の乾いた岩で身体を温め、昼食にした。

 この後は、小滝の連続帯を越え、コンクリート製の旧い堰堤、頭上の吊橋を過ぎると巨岩の集まったゴーロになる。沢の流れは巨岩によって狭められ、勢いのある小さな滝をあちこちに形成する。岩が大きいため、すでに6時間ほど遡行した身体には、その乗り越しが苦しい。沢床には厚い緑の苔が生え、先ほどまでの開放的で明るい沢の雰囲気が、落ち着いた柔らかい風景に変貌する。日本的な風景といったら良いのだろうか。なかなかの情緒がある。これが、遡行終了点の標高1340mの二俣まで続く。二俣を左へ入ると10分ぐらいで左に登山道を見る。気を付けて行かないと見過ごしてしまうかもしれない。




三段18m滝 最初の難所で緊張する。下段4mは左のバンドを落ち口までトラバース。中段10mは、左のスラブを登る。ホールドは細かいが傾斜はやや緩い。フェルト靴のフリクションは思ったより良好。 三段滝の中段を登る山崎さん。落ち口下のホールドが細かくなる。



三段滝の先にある4m滝の釜をへつる大橋さん。この先はまだ深くなる。
三段滝の中段上へ左岸から入る枝沢。三段21m。

同じ4m滝の釜をさっそく泳ぐ高橋。へつりが下手なためか? 釜のある4m滝 左から登れる

次も釜のある4m滝 右をへつりながら越える 大滝100m下部 右岩にいる人間を見るとその大きさが分かる

左から見た大滝100m 圧倒的景観

300m離れた巻き道を上がった途中から見た大滝の全容

大滝展望台へ上がり登山道を登ること8分。巻き道の下降点少し先にある 旧い索道の錆びた滑車。下降点はこの少し手前にある。

沢へ降りた先にある10m滝 左を登る。見た目より手ごたえがある。 10m滝 水量が多い

堰堤のような6m滝 直登は難しい。左に巻き道がある。 バンドへ上がる所がひと工夫必要になる。 中央が凹の5m滝 右を簡単に登れる なぜか万歳をしている

渦巻く不思議なドーナツ 水流で回転している ホラ貝沢の出合 小さなナメ滝になっている。

ヒョングリを打つ5m滝 水と岩と緑の饗宴の下を歩む


中央がえぐられたスラブナメ滝 傾斜がきつく左右とも難しそうだ。大橋さんと山崎さんが相談する。登れるかなー。この後、山崎さんが右の斜面を登った。

幅広10m滝(第一ナイアガラ) 見事な幅広ナメ滝 山崎さんが、 右端の窪を登りブッシュを掴んで落ち口にトラバース。筋力を試される。 第一ナイアガラの上は広いナメ


第二ナイアガラ8m 左右とも登れる。山崎さんは右を探索。
12mヒョングリの滝 ルートを探る山崎さん ここは右岸の巻き道へ上がった。 滝すぐ手前左のやや脆い岩を5mほど登ってブッシュ帯をトラバースする。


8m滝 右を巻き気味に越える どれもこれも深い釜がある
15m二条滝を左横から 水量が多いので難しいように見える 大滝100mを除くと最大の落差


15m二条滝を登る高橋 落ち口に小さく見えるのは大橋さん
15m二条滝を正面から 右水流の傾斜の緩いルートを大橋さんが登攀 みごとにクリアして、後続にロープを出してもらう。

左に球形の洞が見える7m滝 山崎さんがへつりのルートを探るが難しい。
左に球形の洞が見える7m滝 釜が深く滝下へ辿り着けない。
 釜左を高橋が泳ぎ、洞へ這い上がる。水勢の強い滝を右に移り、右の細い水流沿いを登る。後続へは念のためロープを出す。

左に球形の洞が見える7m滝 右の水流沿いを登る山崎さん。水を浴びる。 まさに命綱だ。 巨岩のゴーロ帯 先行する山崎さんがルート探索に苦労する。


ゴーロ帯 石に苔が生えている。ゴーロ帯は40分ほど続く
標高1340mの二俣を左の枝沢に入る。10分ほど歩くとトロッコの残骸が。 この手前左から登山道に上がった。


コースタイム
滑川橋入渓7:00−三段の滝18m7:11−100m大滝下8:03−巻き道8:18−大滝展望台8:37〜8:47−下降点8:55−堰堤状6m滝9:30−ネコノ沢出合9:48−ホラ貝沢出合10:06−幅広10m滝10:42−ヒョングリの滝12m11:05−15m二条滝11:35−左に洞のある7m滝11:55〜12:27−昼食12:30〜12:58−ゴーロ開始13:08−二俣(標高1340m)13:51−登山道14:00−滑川温泉15:20



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吾妻 前川大滝沢

2009年7月5日 曇りときどき晴れ
W-Climbers
大橋さん、山崎さん、高橋

遡行図

桃色の姫小百合が咲いていた。山形の山に多いという。