丹沢 神ノ川大谷沢(大岩沢)

2009年5月31日 晴れのち雨
沢登り同好会 さわね
ガクさん、高橋

ゴルジュ入り口付近 奥に4m滝、7m滝の一部が見える

遡行図


 今日は「さわね」の行事で丹沢、神ノ川・大谷沢へ出掛けた。今回は、奥秩父の水晶谷と別れての分散遡行だ。丹沢、神ノ川組は、昨日もエビラ沢へ入る予定だったが、こちらの方は、前々日の雨の影響で中止した。朝7:30に中央本線・藤野駅でガクさんを迎え、神ノ川ヒュッテ前の日蔭沢橋へ向かった。出掛ける頃、くもりの天気予報に反して空は青く晴れ渡っている。ラッキーな一日になりそうな予感がする。だが、それはすぐ裏切られることに。

 神ノ川ヒュッテの左の林道を日蔭沢沿いに進み、大谷沢の出合付近で入渓した。林道の右が広くなったここには、「大谷沢」の看板がある。手前の日蔭沢を渡ればすぐに大谷沢だ。大谷沢を「おおたにさわ」と読むとする文献もあるが、「おおやさわ」が正解だと勝手に思っている。大谷沢は大岩沢とも呼ばれるが、これは、ゴルジュの中間部に鎮座する二つの大岩が、その由来だと思う。その岩を私は密かに「夫婦岩」と読んでいる。片方が10mほど、もう片方が5mぐらいの高さだ。二つの岩はもともと一つであったらしく、両者を寄せ合わせるとその岩の曲面がぴたりと合う形状になっている。「おおいわさわ」が訛って「おおやさわ」となったと思うがどうだろうか。
 堰堤を四つ越えると、ゴルジュになる。ゴルジュの最初の滝は4m(F1)に過ぎないが、幅2mぐらいに狭められた流れは強く、とても水流沿いを登ろうという気にならない。2年前に来たときには、シャワークライムでこの滝を登っているが、今日の水量はその5倍ほど有るだろう。予報に反して、沢には5月の太陽が明るく射し込んでいるが、この水量はいかんともできない。この先も、この水量に悩まされることになる。
 水飛沫で濡れたF1の左壁の登攀もかなわず、結局は左の土壁の高巻きを決心した。ここは初めてだ。滝すぐ左の土壁を登り始めたが、なかなか手強い。ガクさんに確保を頼んで、左から回りこんで核心を越えた。土壁の傾斜が緩くなる辺りで落ち口方向へトラバースすると、遥か下に大きな滝が見えた。F3‐7mだ。今まで見たことのないような水量である。幸い沢への下りは、しっかりしたルートがあり、ロープ無しで下降できた。
 
F3‐7mの上は、左岸が開け、しかも日が射し込んでいるため明るい。ここで、ゴルジュ通過の楽しみを奪われた心をしばし慰める。この奥は、再び両岸迫る日差しのない薄暗いゴルジュになる。すぐ難しそうな5mの滝が現れるが、ここは右を簡単に越える。その先に、大谷沢の盟主、F4‐12mがある。F4は、沢が曲折する場所にあるので、その滝の全容を掴むのは難しい。手前から捉えられる姿は、6mほどのF4の下段だけである。上段6mは、左岸を8mほど登ったテラスの上から望むことができる。このテラスへ上がるには、滝手前の左岸にある8mの凹角を登らなければならない。ここは、ガクさんに確保をお願いしてロープを引く。凹角の上部でホールドが細かくなるが、残置支点があるのでビレイを取ってここを越える。そこは広いテラスになっていてF4の落ち口方向へ伸びている。ここには、ちょうど良い位置に、支点にできる腕ほどの太さの潅木がある。
 
テラスの先には、F4手前の左岸から直角に枝沢が交わり、二段6mほどの滝になって、F4と同じ釜に水を落としている。幸い枝沢の水量は少ないため、ここを登ってその上からF4の上段を巻くことにした。F4の上段を直登するには、テラスからF4滝のバンドへ3mほど下降して滝を登り返すことになる。だが、この下降が危ういし水量が多いので、今日は上段の登り返しもかなり難しい。枝沢の二段6m滝の水流沿いを上がり、さらにその上の4m滝を越えてから、左の支尾根を三つほど横断してトラバースした。三つ目の支尾根に立つと眼下に沢が見えてきた。沢への下降は容易だ。
 沢へ降り、ゴーロを遡って行くと大岩の散在する場所に出る。左手に巨大な岩が二つ並んでいるのが見える。左の岩はあまりに大きく、すぐには気付かないぐらいだ。これが、大岩沢(大谷沢)の由来となった岩だと思う。この辺りが、最も大谷沢の雰囲気を醸し出している所だ。ゴーロに勢いを増す水が迸り、大小の岩によって造られたゴロタの滝々が、幾筋もの白い流れを見せている。深い緑が沢筋を蓋するが、樹間から差し込んだ強い日差しが水面や濡れた岩に煌くのが見える。

 
右から沢が入ると、本流には大岩の5m滝が現れる。すぐその先は、豪快に水を落とす8mほどの滝になる。ここは、左の乾いた岩を登り小さく巻いた。さらに進むと両岸が狭まったゴルジュになり、突き当りで直角に向きを変える6m滝になる。上部にはCSを抱えている。いつもはCSの左側から水を落としているこの滝は、今日はCSの右からも勢い良く水を落としている。おかげで水流沿いを登る右のルートが使えない。滝左のルートは残置支点が二箇所ほど見えるが、ホールドが乏しいので万年初心者の自分が登るには難しい。ここは、左の岩を登った後ブッシュに逃げ、その先で10m程の懸垂になった。
 この先にもすぐ大きな滝が待ち受けている。F8‐8mだ。一見難しそうな滝だが、右のリッジに弱点がある。豊富なホールドを拾って難なく落ち口へ出る。ガクさんはこの釜をへつっているときに岩が剥がれてドボン。振り返ったときには、釜に落ちていた。この上はきれいなナメになりその先はゴーロに変化する。ここからは、遡行終了点までに幾つか滝が出てくるが難しい滝はなく、延々とゴーロを歩くことになる。標高920m地点で昼食をとる頃には、雨が降り出していた。今朝の予報では、近畿地方から移動して来る雷雲によって、一時的に強い雨が降るとの予報だった。さっきまでの陽光もいつの間にか失せ、薄いガスも垂れ込めて来た。

 
ゴーロ歩きは緊張感がないため退屈だが、私は嫌いではない。所々に自然にできたゴロタの滝を見て、沢筋の緑や花を楽しんで歩けばゴーロも捨てたものじゃない。だが、雨の降り出した長いゴーロは単調だ。大谷沢のゴルジュと核心部の滝、F8までを歩くのに3時間半も費やしてしまい、まだ半分以上の行程が残っている。ゴーロは長いし足は疲れてくる。雨は三俣(1010m地点)のあたりで本降りになるし、気は急いて来る。
 
傾斜は緩いが大きな10m滝とナメを越え三俣を過ぎると、多段滝(2、3、4、4m)、そして6m滝となる。この辺りも晴れていれば、雰囲気のある場所だろう。普段水の少ない6m滝も水量いっぱいで水流沿いはシャワーを浴びた。水の多かった大谷沢もさすがに1170m地点で水は涸れ、その先は時々現れる涸滝の登りになる。1250m地点で10m、6mの涸滝を登り、1380m地点で沢は二俣となる。左俣は巨大な岩が沢を塞いでいる。ガスが懸かりよく見えないが、岩の上には大きな木が生えているようだ。ここは本流の右俣に入る。15分ほど歩くと右岸が明るく開け赤土のガレになる。
 この赤土のガレが曲者だった。ガレ中央の窪を登るに従い傾斜は増し、いつもは締まっている赤土の表面が、降り続く雨を吸って滑りやすくなっていた。いつの間にかガレの上部で窪も消え、前進不可能になった。左に見える支尾根まで20mぐらいだが、赤土を深く削りスタンスにしながらトラバースをするのに相当の時間をとられた。支尾根に這い上がり、やっとのことで稜線の山道に出たのは、3時半頃だった。日蔭沢橋を出てから7時間掛かっている。大谷沢の遡行は、その水量で大きく変わる。直登できる滝も水量によっては難しくなることを考えなくてはならない。
 下山は、雨に濡れて滑りやすい登山道を、犬越路を経て日蔭沢橋まで、2時間の行程だった。ガクさんと楽しく四方山話をしながら下りた。自然に会話が弾むのは、遡行で続いた緊張が解けたからなのだろうか。


F4手前の5m滝 左に古いロープが下がっている。ここは右壁を登る

F4−12m 下段が6m見える。この奥に上段6mが。ここは、滝手前左岸の凹角8mを登り巻く。 

雰囲気のあるF4上のゴーロ。正面奥とその左に大岩が見える。大岩沢の由来と思われる大岩(夫婦岩)だ。 

 
F4上、ゴロタ滝の連続 最奥がF6−8m、その手前がF5−5m

F6−8m 左の壁を小さく巻く。 

F7−6mCS 水量が多い。左の岩からブッシュに入り、懸垂下降。 

三俣を過ぎた多段滝上の6m滝を登る。水量が多い。 


コースタイム
日蔭沢橋8:40−F1・4m9:18−F3・7m上10:10−F4・12m上11:06−F7・6mCS滝11:32−F8・8m12:12−昼食12:24〜12:37−三俣13:12−涸滝10m14:04−赤土斜面下14:40稜線15:30〜15:45犬越路16:45−日蔭沢橋17:45



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